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「白メシ泥棒!」と叫びたくなる定食屋さん__ツレヅレハナコの旨いもの閻魔帳

 食いしん坊編集者・ツレヅレハナコさんのもとには、類は友を呼ぶで、老若男女、有名無名を問わず、胃袋でつながった仲間たちから、旨いもの情報が集まってくる。ハナコさんは、それらを書き留めた秘密の手帳を“閻魔帳”と名づけ、それを片手に東へ、西へ。仲間たち(=諜報員)のおススメの店を訪ねてきたハナコさんが、彼ら彼女らへの感謝の気持ちを込めて、自身が愛するお店の中から、それぞれにぴったりのお店を返礼として紹介するこの企画。『東京ウォーカー』(KADOKAWA)で好評だった連載が、このたびめでたく装いも新たに『日刊SPA!」で再スタート!

定食屋さんのおかずでがっつり飲みたいから

菱田屋

 東京・駒場東大前の商店街にある。近くの東大の先生や学生たちはもちろん、わざわざ遠方から訪れるファンも多く、常に行列ができている

 今回のお店はコチラ。キッチン浜家(錦糸町/洋食)を教えてくれた諜報員004(40代男性/ライター)にハナコがお返しに教えたい店は駒場東大前の菱田屋(instagram@hishidaya)さん

「白メシ泥棒~!」と叫んでしまう定食屋さんのおかず。実はお酒にもよく合うんです

菱田屋

5代目の菱田アキラさんは、忙しい合間をぬって料理教室にも通い、時々本格的な欧風カレーや粗びき牛100%レアハンバーグ、ブラジル風豚肉黒豆煮込みといった料理もメニューに登場する

 東京・駒場東大前にある「菱田屋」は、コンクリート打ちっ放しのおしゃれなカフェ風の佇まいだけれど、明治創業で100年以上続いている町の定食屋さん。もともとは東大などに料理を届ける仕出し屋さんだったそうで、現在の店主・菱田アキラさんが5代目。
菱田屋

4代目の菱田憲昭さんは“おとうさん”の相性で親しまれている。おとうさんのぬか漬けと味噌汁のファンは多し

 4代目の憲昭さん(通称“おとうさん”)はアキラさんの義父で、今では店に出るのは夜だけになってしまったけれど、まだまだ現役。刺し身や焼き魚、昼の定食の要であるぬか漬けとみそ汁はおとうさんの担当で、アキラさんは揚げ物や炒めものなど、その他の料理に腕を振るう。
菱田屋

あじフライ¥850。衣はザクザク、中はふわっふわ。その秘密は、薄力粉と卵に水分を加えたバッターミックスで素材と衣を密着させているから。「中が密閉されて蒸し焼き状態になるんです」とアキラさん

 メニューには肉豆腐や生姜焼き、あじフライといった昔ながらのおかずに並んで、油淋鶏や麻婆豆腐などの本格中華が多いのは、アキラさんが伝説の中華料理店「文琳」で修業していたから。「お客さんみんなにお腹いっぱいになってほしい。でも、量が多いだけではダメで、ガッツリしているからこそ、毎日でも食べ飽きない味を」というのがアキラさんのモットー。おいしさに対する探求心と追求心は半端なく、だからこそ、なじみのある料理なのにびっくりするくらいおいしくて、思わず「この白メシ泥棒~!」と叫んでしまうほど。

充実したお酒のラインアップは、もはや定食屋さんの域を遥かに越えてます

油淋鶏¥850。定食のつけ合わせのスパゲティサラダ¥350。「砂糖と酢とマヨネーズだけで和えた昭和のレトロな味。これはおとうさんが昔から作っているレシピのままです」とアキラさん。後味もサッパリ。生ビール¥550

 定食屋さんのおかずは、白いごはんに合うのはもちろん、お酒のアテにも最高で、普段の私は、定食屋さんでは昼でも米なし、ビール派。これまで散々定食屋さんで昼酒を飲んできたけれど、ここでは昼にごはんを食べない選択肢はなく、「ごはん3分の1で」とお願いするたび、密かに敗北感すら感じてしまう(いったい何の勝負よ?)。
菱田屋

肉豆腐¥850。先代から受け継ぐ冬の定番メニュー。上に大きな車麩が丸ごとドーン。肉も豆腐も全然見えない(笑)。とろとろの半熟卵をからめながらどうぞ

 だからというわけでもないけれど、夜には定食のおかずをつまみに、思いっきり酒を飲みたい! 何しろ「どうぞ飲んでください!」と言わんばかりのお酒のラインアップは、定食屋さんとは思えないほどの充実ぶり。ビールは生の他に瓶が3種類、日本酒は冷酒に加えて燗酒も! 本格焼酎は芋と麦、さらには酎ハイやサワーも各種取り揃え、なんとカンパリソーダまで! これは夜に飲まない選択肢はないでしょ。
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夜だけ登場する肉焼売
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