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昼酒が楽しい小さな台湾料理店――ツレヅレハナコの旨いもの閻魔帳

 食いしん坊編集者・ツレヅレハナコさんのもとには、類は友を呼ぶで、老若男女、有名無名を問わず、胃袋でつながった仲間たちから、旨いもの情報が集まってくる。ハナコさんは、それらを書き留めた秘密の手帳を”閻魔帳”と名づけ、それを片手に東へ、西へ。仲間たち(=諜報員)のおススメの店を訪ねてきたハナコさんが、彼ら彼女らへの感謝の気持ちを込めて、自身が愛するお店の中から、それぞれにぴったりのお店を返礼として紹介するこの企画。『東京ウォーカー』(KADOKAWA)で好評だった連載が『日刊SPA!』にお引っ越しして、今回は第2回目となりました。

家族経営のアットホームなアジア料理を共有したいから

瑞鳳

東京・荻窪の南口仲通り商店街にある。この外観にひと目惚れ。ドアと窓にびっしり貼られた写真メニューも、店名の書体も、ショーケースの蛍光灯の光も、そして紹興酒の甕が室外機の横に無造作に置かれているところも、何もかもがツボ

 今回のお店はコチラ。亞細亞(五反田/中華)を教えてくれた諜報員016(40代女性/アーティスト)にハナコがお返しに教えたい店は、荻窪の瑞鳳 南口仲通店さん。

壁一面の料理写真が一斉に私に手招き。一気にテンションが上がります。

瑞鳳

壁一面に貼られた写真メニュー。どれも本当においしそうで、赤文字と黒文字のバランスも絶妙。デザイン性を狙っていないからこそ、かえってそそられる

 中央線LOVE。中央線沿線で生まれ育ったせいか、中央線に乗ると心が躍るし、沿線に好きな店も多い。なかでも4年ほど住んでいた荻窪は、西荻窪ほどしゃれていなくて、地に足のついた店が多いところがいい。引っ越して荻窪を離れてからも、買い出しや飲みにと、実はちょこちょこやって来ては、馴染みの店に顔を出す。南口仲通り商店街にある台湾料理店、瑞鳳もそのひとつ。
瑞鳳

「妹が作るシジミの正油漬けは日本一美味しいよ」とお母さん。シジミ正油漬け¥600。豚耳、豚ハツ、チャーシュー、豚ガツ、鶏砂肝、茶玉子、昆布、押し豆腐から好きなものを3品選べる三品セット¥580。酒飲みにはたまらない。卵好きの私としては茶玉子はマストで、今日は豚ハツとチャーシューで。烏龍ハイ¥450

 荻窪に住み始めた頃、たまたま店の前を通りかかったら、料理の写真がベタベタ貼ってある外観があまりに気になりすぎて、どうにも素通りできない。いざ中に入ってみると、カウンターだけの小さな店内の壁一面にも料理の写真が隙間なくびっしり! ずらりと並んだ酒のつまみが一斉に私に手招きしているようで、一気にテンションが上がったっけ。  どのメニューもおいしそうだけど、まずは台湾料理店で決まって頼むシジミの醤油漬けと茶玉子を頼んだら、それがもう素晴らしいのなんの、正真正銘本場の味。
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お母さんの話をつまみに飲む
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食と酒と旅をこよなく愛する編集者。雑誌などのメディアやTwitter、Instagramでレシピや美味しいお店を発信中。新刊『ツレヅレハナコの2素材で私つまみ』がKADOKAWAより好評発売中。他にも『女ひとりの夜つまみ』(幻冬舎)、『ツレヅレハナコの薬味づくしおつまみ帖』(PHP研究所)『ツレヅレハナコの南の島へ呑みに行こうよ!』(光文社)、『女ひとり、家を建てる』(河出書房新社)など著書多数。Twitter@turehana instagram@turehana1

ツレヅレハナコの旨いもの閻魔帳

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