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「結局のところ僕は書くことで人生切り拓いてきた」山本周五郎賞作家・早見和真の素顔

イノセントデイズと同じテンションで……

――『ザ・ロイヤルファミリー』と違って、楽しそうという観点で選んだテーマではありませんよね。 「『八月の母』を書いているときは、『イノセント・デイズ』を書いてたときに近いテンションですね。『イノセント・デイズ』の執筆中は全然食わないし寝られないっていう状態が続いて12キロぐらい痩せたんですけど、それは小説を書くという作業をしやすいコンディションなんですよ。テーマが楽しい・楽しくないよりも、自分がどれだけ没入できるかどうかなので」 ――では最後に、2021年の目標を教えてください。 「先ほど高校野球の話をしましたが、3月に新潮社から高校野球のノンフィクションルポ本として出ることになったんですよ。それを先日通して読んだときに、結構シビれるくらいにいいなって思えたんです。もともと僕は、それこそ『週刊SPA!』でライターとして書かせてもらってたように、ノンフィクションでいくべきか、小説でいくべきかって本当に悩んだ時期があったんですが、それが今回、図らずもノンフィクションを書かせてもらうことになった。ひょっとしたら最初で最後かもしれないものが、これであってよかったなって思えたんですよね」

今年は人生で一番書く年にしたい

――書きたいと思わせてくれたきっかけでもあり、ですよね。
早見和真

行きつけの店で大将と話す早見氏

「彼ら高校球児たちと過ごした時間は、ものすごく大きかった。彼らからもらった、書きたい、書けるぞ、っていう感覚は、たぶん1年ぐらいは持続すると思うから、今年は猛烈に、人生でいちばん書く年になるんじゃないかなって気はしてます。本も5冊出る予定だから、そのおかげで忙しくなるんだろうな(苦笑)」 ――山本周五郎賞も受賞したことですしね。 「歴代の受賞作品が、その作家の代表作といえるような、本当にいい作品ばかりなんですよね。よく『この賞を汚さないように』っていう定型文があるけど、僕、ガチでそう思ってるな(笑)。だから、『クソ野郎のクソ小説だ』って15年後に思われないように、賞の名を汚さないように頑張ろうって本当に思ってます!」 構成/松嶋千春(清談社) 撮影/吉原章典
様々なメディア媒体で活躍する編集プロダクション「清談社」所属の編集・ライター。商品検証企画から潜入取材まで幅広く手がける。
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