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<純烈物語>クドカン的音楽手法に音で返す。リーダー酒井はなぜドラマ『俺の家の話』に突き動かされたのか<第88回>

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潤 沢を完コピした動画(純烈公式YouTubeチャンネルより)

<第88回>クドカン的音楽手法に音楽で返した形に……酒井一圭はなぜそこまで『俺の家の話』に突き動かされたのか

 御園座・水戸黄門公演の最終稽古を終えたあと、2時間で潤 沢『秘すれば花』の歌入れを済ませた純烈の4人は、なかなかのヘロヘロ状態だった。翌日の午前中には名古屋へと向かうスケジュール。場合によっては、約1ヵ月分の準備をするうち、ほとんど寝られぬまま朝を迎えてしまうかもしれない。  それでも「早く帰りたい」と口にするメンバー、スタッフは一人もいなかった。むしろ、リーダー・酒井一圭の思いつきに対し、全力で応えようとしていた。 「あちらは長瀬(智也)さんたちなんですよ。絵的にも会場がスパリゾートハワイアンで、有観客でもある。これは、ただ歌ってみたじゃ太刀打ちできないだろうから、いろいろ考えてやらなければとなって。とりあえず完コピをベースにして、やれないところは純烈らしくいこうと。

寿限無メイク&過剰なる顔芸を披露した小田井

 たかっし(阿部サダヲ)はステージに出る前の幕の中でこういう感じだったんじゃないの?っていうのを、白川(裕二郎)のリップ(への寄りショット)から始めて、普通のムード歌謡よりもわざとエロく歌えと。後上(翔太)は永山(絢斗)さん役なので素人っぽく振り切った元気な感じ。小田井(涼平)さんの寿限無(桐谷健太)メイクは、現場に来てからのアドリブ。純烈ライブと同じでよけいなことをやる役割を、ちゃんとやってくれた」
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寿限無メイクを施した小田井(純烈公式YouTubeチャンネルより)

 メイクを施すだけでは飽き足らず、過剰なまでの顔芸を歌い終えたあとのメッセージ動画中も続けた小田井。一般的なリーダーだったら、そこで「おい、それやりすぎやろ。桐谷さんからクレームが来たらどうすんねん!」となるのだが、残念ながら酒井一圭は「怒られたらそれはそれで面白いな」と思ってしまう人間。なのでこの場合、放し飼い。  その酒井自身も長瀬の顔芸で曲を締めた。『俺の家の話』ではテロップで出された「恋はFlower」の歌詞を「恋はブリザード」と変えて歌われたが(プロレスラーとしてのリングネームがブリザード寿)、そこは元のリリックで原曲を忠実に再現。
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長瀬智也の顔芸で締めた酒井(純烈公式YouTubeチャンネルより)

 ノリノリでやるメンバーと、それを形にするべく動くスタッフを見て、酒井は「みんな、すっかり純烈になっているなあ」と噛み締めたという。過去、どんなに自分がいくぞ!と息巻いても、周りがついてこられぬ歴史があったからだ。  思いついたところで駒もスキルも足りず、それを実現できる体制が整っていなかった。でも今なら「喜んでもらえるものを作れる」チーム力がある。 「小学生の頃の僕を知っている人間は、みんな『一圭、芸風変わっとらんなあ』って言うはずです。小さい時から動機は“遊び”なんですよ。それを実現させるために一人で突っ走っていた。今でも、なんで仕事に遊びが負けなあかんねん!って思いながらやっていますもん」
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チェックに出すと即レスしてくれたTBSスタッフの熱量
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(すずきけん)――’66年、東京都葛飾区亀有出身。’88年9月~’09年9月までアルバイト時代から数え21年間、ベースボール・マガジン社に在籍し『週刊プロレス』編集次長及び同誌携帯サイト『週刊プロレスmobile』編集長を務める。退社後はフリー編集ライターとしてプロレスに限らず音楽、演劇、映画などで執筆。50団体以上のプロレス中継の実況・解説をする。酒井一圭とはマッスルのテレビ中継解説を務めたことから知り合い、マッスル休止後も出演舞台のレビューを執筆。今回のマッスル再開時にもコラムを寄稿している。Twitter@yaroutxtfacebook「Kensuzukitxt」 blog「KEN筆.txt」。著書『白と黒とハッピー~純烈物語』『純烈物語 20-21』が発売

純烈物語 20-21

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