仕事

横浜市は中華街、崎陽軒etc.地元密着型のフードデリバリーに勝機はあるか

地元を知る配達員だからこそ、効率的なデリバリーが可能に

横浜中華街

横浜中華街でデリバリーを行うNEW PORTの配達員

 配達可能なメニューのバリエーションが広がったことで、順調にサービスは成長していったという。 「高層ビル内に入居する企業のオフィスまでデリバリーするには、複雑な出入り口の把握が必要になりますし、何よりオフィスの執務エリアまでは基本配達できません。  他方、NEW PORTは商業施設や高層タワーといったデベロッパー単位でサービス設計しているので、『裏口から配達して執務エリアまで届ける』というオペレーションが作れる。さらに、地元を熟知した地域住民を配達員として雇っている分、より効率的なデリバリーが可能なんです」  また、地元密着型のフードデリバリーとして、「他社と棲み分けしている点は他にもある」と木村さんは言う。 「配達員は主に地元の大学生や主婦の方が多いんですが、配達員がおすすめのデリバリーメニューの実食記事を配信したり、商店街と一緒に新しいデリバリー商品を開発したりと、ローカルコミュニティを意識した取り組みを行っています。面白いのは『まかない制度』という食事補助制度があり、アルバイト・社員問わずデリバリーメニューの50%を会社で負担しているんですね。配達員自らもランチやディナーなどでデリバリーを使ってもらい、街の飲食店活性化に貢献できる。かつ美味しいと思ったものは記事で発信できるため、地元密着でローカルを深掘りしているところが強みだと思っています」

コロナで売上が9割減。法人から個人デリバリーへ注力することに

 しかし、2020年に突如として猛威を振るった新型コロナウイルスの感染拡大。それまで成長を一途にたどっていたNEW PORTも、大きな痛手を負うことになる。 「去年の春先は本当に青ざめしてしまった」と吐露する木村さんは、個人へのデリバリーを開始した背景について次のように語った。 「緊急事態宣言が発令された途端、オフィスに出社するサラリーマンの数が極端に減り、オーダー件数も通常の1/10くらいまで縮小したんです。『これではまずい』と思い、水面下で仕込んでいた個人向けのデリバリーを前倒しで始めようと決心しました」  こうして生まれたのが、横浜市と連携したプロジェクト「うまいぞ!横浜。」だ。  横浜の大切な「食」を守るために、NEW PORTがコロナ禍で苦心する飲食店の受け皿となり、地域住民へフードデリバリーやテイクアウトを推進していく取り組みになっているそうだ。 「横浜市と連携協定を結んだことにより、うちから営業を行わなくても、飲食店側から連絡をいただくことも多かったんです。横浜中華街の名店や地元で有名な美味しいお店からもお声がけいただいたことで、認知度は尻上がりに広がっていきました」
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「あの名店も遂にデリバリーを始めたのか」
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1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている

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