戦極MCBATTLE主宰・MC正社員が、MCバトルのシーンやヒップホップをビジネスやカルチャー面から語る本連載。今回からは漢 a.k.a. GAMIとの対談を全5回で掲載。プレイヤーとして、そして大会のオーガナイザーとして、日本のMCバトルシーンを牽引してきた漢と、その姿に触発されて自身の大会を作ってきたMC正社員が、シーンの今と昔、そして未来を語り合う。
「人の上に立つワルの目はやっぱりキレイ」(MC正社員)
MC正社員(左)と漢 a.k.a. GAMI(右)
MC正社員(以下、正社員):「僕と漢さんと初めて会ったのは2012年の『THE罵倒2012 FINAL』なんですよね。そこで『戦慄MCBATTLEやっている正社員です』と声をかけたんですけど、覚えてますか?」
漢 a.k.a. GAMI(以下、漢):「覚えてない。でも正社員のことは知ってたよ」
正社員:「僕はその日はじめて話したとき、
漢さんの目がむちゃくちゃキレイだったことまで覚えてます!」
漢:「
俺の目、キレイだろ?」
正社員:「お世辞じゃなくマジでキレイですね(笑)。そのとき僕は会社員だったので、『人の上に立つワルい人って、こういう目をしているんだな』って感じたのを覚えています」
――2012年当時、正社員さんはもうMCバトルの主催者だったわけですよね。漢さんたちが2005年に立ち上げたUMB(ULTIMATE MC BATTLE)はどのような存在だったんでしょうか。
正社員:「MCバトルにハマったきっかけだし、青春ですよね」
漢:「UMBはいつから見てるの?」
正社員:「DVDはたぶん2005から持っていて、現場に足を運んだのは2008からですかね。僕がMCバトルに本格的にハマったのは、2007年の大晦日に川崎クラブチッタで『DELUX RELAX 年越し SPECIAL“鉄則”』というイベントを見てから。そこでPUNPEE対回鍋肉のバトルを見て『
MCバトルってヤバい!』って思ったんです。
それでUMBも見るようになったし、MCバトルの主催者としても影響をガッツリ受けてましたね。UMBを見まくったうえで、『こうすれば大会が盛り上がるんだな』『自分のイベントはこういう方向にしよう』と考えて、自分なりに発展させたMCバトルの大会が『戦極MC BATTLE』だと思ってるので。
あと2011年から、UMBの埼玉予選もやらせてもらいましたよね。漢さんはウチの現場には来なかったですけど、当時のUMBは
マジでいろいろ怖かったです。『
ヒップホップってマジでこういう世界なんだな』って驚きました」
漢:「こっちは激動だったからね。でも俺自身は人当たりもいいと思うし、そんなに怖くないでしょ。サグ系のラッパーのなかでは
結構かわいいほうだと思うけどね」
――漢さんのなかで「戦極MC BATTLE」はどういうイベントという印象ですか?
漢:「シーンが大きくなるなかでは大会ごとにオーガナイザーの色が出てきたけど、戦極もそのひとつですよね。戦極だから出場しやすいヤツもいるし、戦極だから本領発揮できるヤツもいる。KOK(漢の9sari Groupが主催するMCバトルの大会『KING OF KINGS』)とはぜんぜん違う大会だけど、違いがあるのはいいことだと思う」
正社員:「戦慄・戦極が出てくる前って、『結局はどの草バトル、UMB以外の大会もUMBで勝つような人が勝つ』って状態だったと思うんですよ。でも戦慄は、はじめて
UMBとは違うタイプの人が勝つ大会になったと思う。今は凱旋MCbattleとかMRJとかの若い大会では、やっぱり若いヤツが多く出るし、若いヤツが勝ちやすい状態ですけど、当時はそういう大会もなかったから」
漢:「たしかに戦極はMCバトルがテレビで放送される前に、一般層をいち早く取り込んだ大会だったかもね。あと正社員はもともと会社員なだけあって、すぐ人のマネをする。しかも
堂々とパクってくるから、こっちもオリジナルな発想をどんどん出さなきゃいけない。お互いスキルが向上していいんじゃないかな」
――そんなにあからさまなんですか(笑)。
漢:「本当にそう。俺らが『全国で大会をやる』って言ったら、『戦極も全国でやろうと思ってて……』とか言いはじめるから。『
こいつイカれてんのかな』って感じるくらい真っ直ぐにね。
でも、結局はどこの主催者も『全国で一番の大会をやりたい』って思ってるし、目指すところは一緒。いろいろな大会があっていいし、それぞれが成長すればいいと思うよ」
正社員:「僕はたしかに……いろいろとパクってますね(笑)」
漢:「すごいと思うよ。
本当あからさま」
正社員:「若手のオーガナイザーには『
俺パクるからな!』って伝えますから」
漢:「こっそりやるんじゃなくて堂々と言うからさ、こっちも『……うん?』みたいな反応になっちゃうし、怒る気がしないんだよ。そういう正社員のキャラクターはシーンの共通認識になっていて、『
まあ正社員だからな』みたいな感じもある」
正社員:「ちょっと、印象が悪い人みたいじゃないですか(笑)」
漢:「実際、
決してよくはないよ」