戦極MCBATTLE主宰・MC正社員が、MCバトルのシーンやヒップホップをビジネスやカルチャー面から語る本連載。漢 a.k.a. GAMIとの対談を全5回で掲載。プレイヤーとして、そして大会のオーガナイザーとして、日本のMCバトルシーンを牽引してきた漢と、その姿に触発されて自身の大会を作ってきたMC正社員が、シーンの今と昔、そして未来を語り合う。最終回の今回は、コロナ禍でのMCバトルシーンの現状と、それぞれの主催する大会の未来について語り合う。
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ダメリーマン成り上がり道
コロナ禍で広まった有料配信の習慣
MC正社員(左)と漢 a.k.a. GAMI(右)
――このコロナ禍の音楽シーンでは「ライブの開催が難しい」「アーティストとしての収入が減った」という話をよく聞きますが、漢さんはいかがですか?
漢 a.k.a. GAMI(以下、漢):「ライブに関しては俺は恵まれていて、2021年の緊急事態宣言が出る前の時期は、ほぼ毎週ライブがあった。でも緊急事態宣言が出たあとはまた難しい状況になったし、多くのラッパーは
ただでさえ少なかったライブがさらに減ったと思う。
だからこそラッパーは楽曲に力を入れて、曲を出して稼げばいいとも思うし、
本来それがラッパーのやることだとも思う。
イベント関係者とオーガナイザーはコロナの打撃が大きいけど、楽曲に力を入れているプレイヤーではそこまで打撃がない人もいると思うね」
――コロナ禍ではMCバトルも観客をあまり入れられなかったり、配信に力を入れ始めたりと状況が変化していると思います。
漢:「コロナの前から俺は
配信に力を入れたいと思ってたし、実際に
UMBの頃にもいち早くトライをしてた。ただ当時は『
サーバーがパンクするからできない』って技術者に言われる状況だったね。
それが今は技術的に可能な時代になったけど、YouTubeが発展しすぎたことで、みんなが『
ゼロ円で見ること』に
慣れてきちゃった。だから配信料が1000円だとしても、若いコには壁がデカい。あと俺ら世代になるとクリックすること自体が怖い」
MC正社員(以下、正社員):「わかります(笑)。クレジットカードをネットで登録したくないですよね」
漢:「でも俺は価格の勝負はどんどんしていこうと思っている。ただ、価格勝負をするにはシステムの組み直しが必要だし、映像の窓口を広めることも必要だし、俺らのやる気も必要。たとえば配信料が500円だったら、課金のハードルが下がって100万程度の売上を確保するのも夢じゃないと思う。ただ、『
それ、実際にやる勇気ある?』『
その価格で勝負できる自信ある?』って話」
正社員:「僕はないです(笑)」
漢:「そこの勇気を持つためには、窓口を広げたりとか、
やるべきことをやっておかないと絶対失敗する。まだうちの会社もそこはできてない部分が多い。だから一年先くらいまで
ビジョンを持って進めないと、配信ビジネスでの成功は難しいと思う。
正社員だったらわかると思うけど、配信の仕組みを改善するには、システム作るエンジニアから、それを管理する会社まで組み直さないといけない。サイトの見せ方でも、クリックしたくなる導線の引き方を考えたりとか、細かい作業が必要になる」
正社員:「
単にネットにあげればいいって話じゃないですからね」
漢:「俺が考える成功への近道のひとつは、『
現時点で多くの人が使っているサービスに入る』という方法。
Instagramの500円課金のライブ配信とかなら、見る側も使いやすいと思うしね。そういう意味では
LINEも面白いと思う。LINEはヒップホップ・レーベルを作るって話も聞いたし、一時期はヒップホップに力を入れていたけど、ただ最近はあまり話を聞かなくなったね。あと、こういうアイデアもあまり喋り過ぎると、また正社員がパクるから」
正社員:「少し先には、全部マネしてるかもしれないです(笑)」