戦極MCBATTLE主宰・MC正社員が、MCバトルのシーンやヒップホップをビジネスやカルチャー面から語る本連載。
前回に続き第2回の対談相手は漢 a.k.a. GAMI。プレイヤーとして、そして大会のオーガナイザーとして、日本のMCバトルシーンを牽引してきた漢と、その姿に触発されて自身の大会を作ってきたMC正社員が、シーンの今と昔、そして未来を語り合う。第2回の今回は漢が日本ではじめた“MCバトルのマネタイズ”がテーマだ。
UMBはヒップホップのフッドから生まれたイベント
MC正社員(左)と漢 a.k.a. GAMI(右)
MC正社員(以下、正社員):漢さんはラッパーとして有名な人なんですけど、
UMBを立ち上げて、今のMCバトルのベースを作ったことも本当にスゴいと思ってます。そしてオーガナイザーの視点から見ると、そのアイデアも早かった。たとえばMCバトルのイベントでエントリー費を取るようになったのもUMBが最初だと思うんですよ。B BOY PARKはエントリー費なかったですもんね。
漢 a.k.a. GAMI(以下、漢):取ってないね。
正社員:ですよね。そこでエントリー費2000円というシステムを作ったのと、全国で予選をして日本一を決めるという形式を作ったこと、あとDVDを作ってそれをマネタイズした。こんなの発明ですよ。
漢:現地に見に行きたくても行けないヤツは絶対いるし、DVDがあれば喜んでくれると思ったからね。俺はアメリカのMCバトルの映像をVHSの時代から手に入れてたし、ダビングしたテープでもとにかく映像を見たかった。英語もわからない俺らが映像だけでアメリカのMCバトルにハマったんだから、日本語のバトルで映像を出したらハマる人は多いと思ってた。あと映像の内容はもちろん、パッケージでもどれだけヒップホップ感を出せるかも考えた。
正社員:2006からはMC一人一人に異名をつけたり、プロの声優の人がナレーションをしたり、演出も凄かったし新しかったですよね。MCバトルを面白くする仕組みってUMBから出てきたものばかりなんです。
漢:俺がLibraにいたとき、目崎くん(デザイナーのDIRTY MEZA)がそういう仕組みが書かれた企画書を作ってきたんだよ。それを見たとき「
これはイケるな」と思った。
正社員:その目崎さんも抜けちゃったんですよね。
漢:俺らが社長と割れて、最初に抜けたね。彼も実家は9sariオフィスのすぐ近くだし、
UMBはヒップホップのフッド[hood]から生まれたイベントなんだよ。隣近所に住んでいて、私生活でも毎日一緒に過ごしてブリってる仲だったから。
漢:これは本(自伝的作品の『
ヒップホップ・ドリーム』)にも書いた話だけど、俺はもともと一般社会に通用するヒップホップ・レーベルを作りたくて、レーベルの有限会社化に向けて300万円を貯めてた。その前からマンションの部屋を借りて会社っぽい名前も名乗ってたけど、きちんとした窓口がないと社会に通用しないからね。
その貯めたカネは、大人の不良のタタキを食らって全部失ったんだけど、そのころに「お前ができなくなったなら俺がやるよ」と言ってきたのがLibra(UMBを主催するレーベル、企業)の社長だった。社長とはレーベルの構想もよく喋る仲だったけど、ヒップホップのビジネスのプランを持ってるのは俺のほうだったね。
正社員:会社ができたのは漢さんが何歳くらいのときですか?
漢:24とかだね。
正社員:じゃあ大学出たあとですか?
漢:俺は大学行ってないよ。高校出て1年間プータローして、アメフトをやろうと思って通信大学に入った。で、編入しようと思ったけど、編入は2年生までにしなきゃいけない。でも勉強もしてないから編入できないじゃん。で、もうやめた。
正社員:そのころにバイトとかしたことあるんですか?
漢:7日間くらいある。派遣のやつね。
正社員:それ以外はもうほぼないですか?
漢:それ以外は
ストリートビジネスだね。
正社員:それが何か僕はわからないですけど(笑)