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飛ぶ鳥を落とす勢いの芸人・ニューヨークの思い「東京がレベル低いなんて、絶対言わせない」

怒りは段々とどうでもよくなってきた

ニューヨーク――ニューヨークのネタは「誰も傷つけない笑い」や「伏線の回収」といった近年のトレンドに乗ったものではなく、映画、ドラマ、音楽といった、さまざまなカルチャーをベースにしていますね。 屋敷:身近な変人、映画、ドラマとネタの出発点はどこだっていいと思ってるし、トレンドとか考えたことないですね。 嶋佐:笑いを研究してネタを練ることはほとんどないですね。基本、僕らと作家さんで雑談しながら作るんですけど、みんなどこかで面白いと感じる部分が重なっている。それが何なのか言葉にするのは難しいですけど。 屋敷:賞レースで勝てそうとか、時流に乗った笑いとか、絶対考えへんやろな。「どこかで見たことあるネタ」を考えても仕方ないし。 ――喜怒哀楽の“怒”を扱ったネタが多いように感じます。 屋敷:そういう時期もありましたね。チャラいヤツがハマー乗ってたりするのが腹立つとか、ハロウィンのフラッシュモブの何がええねん、とか。ただ、そういう怒りは30歳を過ぎたあたりから、段々とどうでもよくなってきました。 嶋佐:なんかもう、自然と怒ることがなくなってきて。

ネタの源泉は「違和感」でも、そのまま出さない

ニューヨーク屋敷:だから今は、違和感を覚えたことをネタにするほうが多いかもしれないですね。たとえば、今の日本って、容姿いじりとか不倫とか自粛警察とか、まったく人の過ちを許さない、人や社会の在り方に完璧を求める風潮が強すぎるじゃないですか。潔癖社会というか。それって僕の中ではものすごく違和感があるから、ネタにできたら面白いんちゃうかなとか。 嶋佐:この前、テレビでやっていた「マスクの正しいつけ方」とかもね。「正しいつけ方」を教えるまで、やたらと長くて、なんならCM入れて引っ張ったりしてた。「今、このご時世で皆さんマスクをちゃんとつけましょう!」という啓蒙的な内容のはずなのに、引き延ばす。それって、どういう倫理観? 屋敷:たしかに、それは違和感あるな(笑)。それで言うと、たとえば「もっともらしいこと言う占い師はうさんくさい」というのもひとつの違和感ですけど、ネタにするときは、そのままストレートに揶揄するのは避けるようになりましたね。 「まんま、塩で食べてください」という悪口よりは、そのうさんくさい占い師がなぜそうなってしまったのかという「過程」をファンタジーにして面白く見せるみたいに、最低でも何かひとつはのっけて料理したい。そうすれば偏見を受け付けない人でも、気づかずに笑ってくれるときがあるんちゃうかなとは思います。 嶋佐:結局、面白いかどうかが大事で、たとえば伏線回収にしても面白くなかったら意味がない。おしゃれな演出で“おお〜”ってなっても、別に面白くはない。でも、いい作品感はあるから、みんな好き。悔しいかな、それが現実ですよね。だから、こんなこと言っておいて、自分たちも全然やるかもしれない(笑)。 ――これまではほとんど男性ファンばかりでしたが、女性ファンも、もう少し増やしていきたい? 嶋佐:今は女性のお客さんもチラホラ見られますけど……、そこに向かってネタを作ることはないですね。 ――そこはあくまで硬派に。 嶋佐:いや、女性に好かれたくないとかはないですよ。普通にワーキャー言われたいですから。なんか僕らのこと、すごく極端なヤツらに仕立てようとしてません?(笑) 屋敷:誰に向けてとか、考えている芸人のほうが少ないんじゃないですか。僕らは普通ですよ。
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「売れなくてもいい」なんて、絶対言えない
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