所持金1万円で家出した20代女性も。急増する「若年ホームレス」の事情
経済的困窮と家族との不和から20歳そこそこで帰る家を失った若者たち。頼れる人もなく、一人で生きざるをえなくなった彼らは小さな背中に何を背負っているのか? どん底を経験した若者の素顔に迫った。
「毎月30人以上の若者から保護を求めるSOSの連絡が入ります」
こう話すのは、関東を中心に生活困窮者の自立支援を目的としたシェアハウスを運営している男性(46歳)だ。利用者の多くが帰る場所のない20代の若者だという。
なぜ、そんなに多くの若者がホームレス化しているのか?「母に家を追い出されまして……」と言葉少なに語るのは、2021年1月から4月までネカフェ生活を送った高田翔平さん(仮名・24歳)だ。
「家を出たときの所持金は2万円。カレー食べ放題のビデオボックスを見つけて、ほぼ毎日1980円のナイトコースを利用していました。夜・朝と具なしカレーを食べて昼間はウーバーの配達。所持金が尽きかけた日はコンビニや公園のベンチで一夜を明かしました」
母子家庭で育った高田さんは高校卒業後に清掃会社に就職したが、先輩から嫌がらせを受けて心身のバランスを崩し、2年で退職。その後、引きこもり生活を送るなかで母親との関係が悪化したという。
「働きだしてから母の求めに応じて毎月8万円、家に入れていました。辞めて引きこもりになってからもウーバーで稼いで4万円入れてましたが、コロナでホテル勤務の母の収入が激減。すると、母は『引っ越すことにしたから、あんたもいい加減、家を出て自立しなさい』と言い出したんです」
今年1月4日、母親に急かされた高田さんは、無言のまま育った家を後にしたという。その足で向かったのは貸しロッカーだった。
「あらかじめ私物を預けておいたんです。ロッカーの場所は自宅から徒歩15分ほどの距離。恥ずかしい話ですが、追い出されても思い出の残る地元を離れられなかった」
実は、今でも高田さんがホームレス生活を送っていたことを知る友人はいない。当時も地元の友人とは定期的に会っていたが、その前日には散髪に行って身だしなみを整えるという念の入れ方だった。
「友人と会っているときだけは、ツラい生活を忘れられた。ホームレスだとバレたら、その時間が壊れそうで怖かったんです」
そんな生活が限界に達したのは4か月がたった頃だった。
「洗っても洗っても足から強烈なアンモニア臭がするようになりました。調べたら極度の疲労を感じると、そうなるとか。これじゃ、友人に会えない。孤独に押し潰されそうになりました。それで保護施設を頼ったんです」
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