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氷河期世代の貧困スパイラルは老後も続く?「4割が年金月10万円未満」の衝撃

現在41~54歳の氷河期世代はまさに“受難の世代”だ。就職難から始まり、なんとか会社に潜り込めても、リストラに怯え、退職後は年金までむしり取られるのは必至。時代に翻弄され続ける彼らの実情に迫った!

氷河期世代を襲う年金問題

[氷河期貧困]の実態氷河期世代は「失われた30年」の間、細く険しいイバラの道を歩まされてきた。だが、今後30年もさまざまなリスクが降りかかり、これまで以上に苦境にあえぐことになるかもしれない。 最たる例が年金問題だ。直近の’23年には、平均で月5万7700円の基礎年金(国民年金)を受給できた。夫婦2人世帯では、基礎年金×2人分+夫の厚生年金が支給され、平均で月20万5060円を受け取っている(厚労省『令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概要』)。 だが、’23年の家計支出の平均は、65歳以上の夫婦2人世帯(無職)で月25万6521円、単身世帯で月14万9286円と、年金受給額を大きく上回る(’24年、総務省『家計調査』)。今でさえ年金だけではとても暮らしていけないのが実情だ。 [氷河期貧困]の実態

氷河期世代の年金は約4割が月10万円未満

では、氷河期世代が65歳になったとき受け取れる年金はどれほどか。昨年、厚労省が公表した財政検証によれば、氷河期世代(現51歳の場合)の基礎年金は月6万1000円。夫婦2人世帯では月21万7000円となる見込みで、物価上昇などを反映してわずかだが増えている。だが、政府の統計分析に精通する弁護士の明石順平氏は、年金制度のカラクリをこう説明する。 「年金支給額は物価に連動して毎年改定されますが、年金が破綻しないよう、『マクロ経済スライド』によって物価が上昇しても年金の増額が抑制されています。しかも、物価上昇率が賃金上昇率を上回った場合、賃金上昇率に連動する仕組みなので、年金受給額はより少なく抑えられてしまうのです」 額面が増えても、物価上昇分を補えるほど増えない制度設計になっているのだ。 「実際、’25年度は物価上昇率が賃金上昇率を上回りましたが、賃金上昇率(=2.3%)そのまま年金額が上がるわけではない。ここからスライド調整率0.4%が差し引かれ、年金の改定率は1.9%に減じられている。『マクロ経済スライド』という名前は欺瞞そのもの。『年金実質減額スライド』と呼ぶべきです」(明石氏) そもそも非正規雇用が多い氷河期世代は、ほかの世代と比べて年金額が少ないのに、実質減額されるのだ。しかも、前述した年金額はあくまでも平均。氷河期世代の大学新卒就職率は低く、現在も非正規雇用を余儀なくされている人も多い。経済的余裕がなく、国民年金の未納・免除率は50%を超えている。厚労省の試算では、氷河期世代の18.1%が月7万円未満、39.1%が月10万円未満の年金しか受け取れないという。 年金制度には第3号被保険者の問題もくすぶる。「3号」は会社員の妻で、年金保険料の納付が免除されたフリーライダーと言っていい。近年、国会で廃止が検討されるものの先送りが繰り返されている。 「700万人以上いる第3号被保険者の反発を恐れ、手をつけられないのでしょう。廃止になれば第1号被保険者として国民年金保険料を納付することになる。そうなれば、月1万7510円の保険料を納めなければいけない」(同) また、仮に廃止によって年金支給が完全に打ち切られれば、月6万1000円もの収入減となる。

医療、介護、福祉でもリスクが降りかかる!?