エンタメ

<純烈物語>テレビから流れる音楽が後上翔太のトピックとなった<第102回>

母親に連れられKinki Kidsのライブへ

 家にラジオを聴く習慣がなかったことからも、後上が耳にする音楽は夜8時~10時台のテレビで流れる作品がほとんどだった。それでも母がKinki Kidsのファンで、何度かライブに連れていってもらった経験がある。 「ジャニーズ好きというわけではなくて、子育てをする中で子どもが見やすい時間帯にテレビへ出てくる人という認識だったみたいで。デビュー前のKinkiを見ているはずです。小学校低学年だと、友達感覚になっちゃうんですよね、一回見ているからって。いまだにスイスイ曲が出てきます。  中学へ入る頃はKinkiとL’Arc〜en〜Cielの『HONEY』『snow drop』『DIVE TO BLUE』、GLAYの『誘惑』『SOUL LOVE』といったところが爆発的に売れていたので聴いたんですけど、そこからアーティストのファンになるまでにはいかなかったんです。レンタルCD店にいってアルバムを借りても、全曲聴いたあとに気に入った作品が2、3曲あったらそればかり聴くタイプでした」  アーティストそのものに惹かれれば過去のアルバムをさかのぼったり、派生した作品に手を伸ばしたりするようになるが、後上はそこまで音楽という文化にのめりこんでいなかった。このあたりは尾崎豊の世界観にハマった白川裕二郎や、BARBEE BOYSのナンバーを自分で演ってみたくなった小田井涼平と違うスタンスだ。  中学に入ると高校1年までの4年間は、部活であるバスケットボールが中心となったように、どちらかというと文化系ではなく体育会系だった。音楽は辛うじてテレビを通じ触れていたが、絵や工作には1ミリも興味がなく映画から何かをインスパイアされることも皆無。  そんな時間があったらスポーツを見たほうがいい。どんなに話題となった映画よりも甲子園における松坂大輔の活躍ぶりや、1998FIFAワールドカップ・フランス大会予選「ジョホールバルの歓喜」に夢中となった。 「もともとテレビっ子になったきっかけが小1の時、長嶋茂雄監督が戻ってきて松井秀喜が入団した1993年でしたから。その頃のプロ野球は月曜を除いて毎日やっているテレビ番組で、選手は一番テレビに出てくる人たちになるわけです。最初はご飯の時に映っていても興味なかったのが、そのうちそっちばかり見て『早く食べなさい!』って怒られるようになった。

テレビの中の松井秀喜に熱中

 子どもの自分と一番年が近くて、ルーキー時代から見ているから松井選手に親近感が湧いて応援するようになりました。野球を超えてみたいと思うようなバラエティー番組もなかったし。その中で流れるCMに使われる曲を憶えていくんですよ」  ギャル男になりテレビを見なくなるまでは、ちゃんと継続してジャイアンツファンだったらしい。そしてバスケットボール部で体育館を走り回っている記憶を呼び覚ますと、そこにBGMなど流れていないのに場面場面の曲が流れ出す。  2002年の日韓ワールドカップに熱狂した高校時代は、制服がない学校だったため各国代表チームのユニフォームを着て登校した。そんな風景にはDragon Ashの『FANTASISTA』が被る。  ギャル男時代の記憶には湘南乃風の『睡蓮花』やDJ OZMAの『アゲアゲEVERY騎士(ナイト)』が流れ、大人になって小田和正の『ラブストーリーは突然に』を耳にするや、小学1年生の自分を鮮明に思い起こせた。音楽をやっていればモテるという認識から高校でお遊び程度のパンクバンドもやったが、むしろカラオケへいくために押さえているようなものだった。 「よく、メドレーを入れて歌えなかったらイッキみたいなゲームをやったんですよ。それだと歌えないとエラい目に遭うから、渋谷センター街に立っていれば有線が聴こえてくるのでそれで覚えていました。だいたい歌うのは“2004年のオリコンランキング”のような括りで。その時はレミオロメンが流行っていたかな」  自分の年表を書き出し、節目となるトピックを抽出すると必ずそこについてくる音楽。それが後上の日常だった。 撮影/ヤナガワゴーッ!
(すずきけん)――’66年、東京都葛飾区亀有出身。’88年9月~’09年9月までアルバイト時代から数え21年間、ベースボール・マガジン社に在籍し『週刊プロレス』編集次長及び同誌携帯サイト『週刊プロレスmobile』編集長を務める。退社後はフリー編集ライターとしてプロレスに限らず音楽、演劇、映画などで執筆。50団体以上のプロレス中継の実況・解説をする。酒井一圭とはマッスルのテレビ中継解説を務めたことから知り合い、マッスル休止後も出演舞台のレビューを執筆。今回のマッスル再開時にもコラムを寄稿している。Twitter@yaroutxtfacebook「Kensuzukitxt」 blog「KEN筆.txt」。著書『白と黒とハッピー~純烈物語』『純烈物語 20-21』が発売

純烈物語 20-21

「濃厚接触アイドル解散の危機!?」エンタメ界を揺るがしている「コロナ禍」。20年末、3年連続3度目の紅白歌合戦出場を果たした、スーパー銭湯アイドル「純烈」はいかにコロナと戦い、それを乗り越えてきたのか。

白と黒とハッピー~純烈物語

なぜ純烈は復活できたのか?波乱万丈、結成から2度目の紅白まで。今こそ明かされる「純烈物語」。
1
2
おすすめ記事
ハッシュタグ