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<純烈物語>パンクバンドでベースを弾いた経験が後上翔太の音楽のレパートリーを増やした<第103回>

ギャル男時代にアガる音楽を聞きまくる

 それを例外とすると、高校時代から純烈結成前まではパンクやトランスのような「いかに騒ぐイメージがつきまとってくるか」が大きなフックだった。この頃、後上はギャル男としてクラブ通いをしていたこともあり、聴く音楽のレパートリーを飛躍的に増やしている。 「洋楽系のパンクはSUM41が流行っていましたね。blink-182、New Found Glory、Good Charlotteとか、そのへんも聴いて『ちょっとこのおじさんたち、シブくていいよね』がThe OffspringやGreen Day。日本ではELLEGARDENやHAWAIIAN6が出てきた。サマーソニックに来るアーティストまでは押さえていました。だからレッチリ(Red Hot Chili Peppers)にRadioheadまではいきました。  わりと人の影響が大きかったと思います。洋楽が好きな人が多いと『日本語の曲なんてだせえよ』と言いたいだけで、その時期はそういう気分になる。家に帰ったら『ミュージックステーション』を見て日本のポップスとかも聴いているのに、外ではやっぱり海外だよなあとか言っていました。そういう意味では形からなんですよ、入るのが。あとは、音楽は楽しむものとの位置づけだから、家でしっかり聴き込むようなこともしなかった」  パンクやトランス、ユーロビートに傾倒していったのは、単純に「うぇーい!」と盛り上がることができたから。聴いたとしても、音楽そのものが趣味の対象という感覚は後上になかった。  にもかかわらず高3から大学にかけてバンドをやったのは、前回も書いたが電気グルーヴかよ!と突っ込みたくなるぐらいに「モテたくて」仕方がなかったからだ。

趣味に明記された「ベース演奏」はモテるため

 同じく公式プロフィルの“趣味”に明記される「ベース演奏」は、この時に培ったもの。コピーも「オリジナルっぽいもの」も両方演ったらしい。 「ベースを選んだのはギターのコードを憶えるのが大変だったから。ベースなら単音で弾けるじゃないですか。最初はパンク、メロコア(メロディック・ハードコア)だからそんなにハードでテクニカルなことはしなかったんですけど、途中からレッチリいいよねみたいな空気になって、ああいう曲を演ろうと。ゴリゴリのチョッパーでファンキーに弾きながら、トリッキーな動き(運指)をやるなんて無理だよって、逃げ回っていましたね。  コピーは高校時代がオフスプ、グリーンで、大学に入ってからはSUM41やblinkあたりも演って。楽譜が読めないんで耳コピですよ。そこにオリジナル曲が加わっていきました。ボーカルとギターの人間が作って、ギターが押さえているパワーコードを見て、人差し指のところを自分も押さえれば音としては外れていない。その程度のものです」  お手本としたベーシストは?と聞くと、プロはあまりに腕が違いすぎてまったく参考にならなかったという。L’Arc~en~CielのTetsuyaがテクニカルに左手を動かしながら高いキーでコーラスを演っているのを見て、あんなふうになれたらいいなと思いつつ、手が届かぬものとの理解もしていた。  銀杏BOYZの前身であるGOING STEADYのベーシスト・安孫子真哉のハードなピッキングプレイにもド肝を抜かれた。こんなのできない、あんなのできるはずがないと逃げ回るうちにメンバーたちがそれぞれの文化圏に踏み出し、バンドの活動は終了。後上はギャル男の道へと踏み出す。最後までレッチリのナンバーはコピーしないままだった。
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純烈が楽器演奏をしたら「みんな死んじゃう」
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(すずきけん)――’66年、東京都葛飾区亀有出身。’88年9月~’09年9月までアルバイト時代から数え21年間、ベースボール・マガジン社に在籍し『週刊プロレス』編集次長及び同誌携帯サイト『週刊プロレスmobile』編集長を務める。退社後はフリー編集ライターとしてプロレスに限らず音楽、演劇、映画などで執筆。50団体以上のプロレス中継の実況・解説をする。酒井一圭とはマッスルのテレビ中継解説を務めたことから知り合い、マッスル休止後も出演舞台のレビューを執筆。今回のマッスル再開時にもコラムを寄稿している。Twitter@yaroutxtfacebook「Kensuzukitxt」 blog「KEN筆.txt」。著書『白と黒とハッピー~純烈物語』『純烈物語 20-21』が発売

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