ミスターラーメン「せたが屋」の社長が見据えるアフターコロナと新トレンド
いまや国民食として日頃から親しまれているラーメン。醤油、塩、豚骨、味噌などさまざまなジャンルが存在し、ラーメン店によってスープや麺のこだわりが異なるのも魅力だろう。
一方、競争が激しいラーメン業界において、長年暖簾を守り続けるのは並大抵のことではない。競合店との差別化はおろか、他業態の飲食店とも競り勝っていかなければならないわけだ。トレンドの移り変わりも早いなか、時代に求められる味をいかに提供できるかがラーメン店の生命線とも言えるのではないだろうか。
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そんななか、「ミスターラーメン」や「カリスマラーメン職人」の異名を持つ、ラーメン業界の巨匠と言われているのが前島司さん。独学でラーメン店を開業して以来、個性あふれるラーメンを次々と世に送り出し、「せたが屋」や「ひるがお」などの人気ラーメン店を展開してきた人物だ。
競争が激しいラーメン業界で生き残るお店の特徴や、直近のトレンドについて前島さんに話を聞いた。
前島さんは一般企業の営業職やペンキ屋などの仕事を転々、紆余曲折を経て行き着いたのがラーメン屋を営むことだった。
飲食業の経験はなく、独学でラーメン作りを覚えて初出店したのが2000年。
当初はラーメンの味を安定させることができずに、一度閉店にまで追いやられたが、不屈の精神で奮闘し、魚介のうまさ引き立つ煮干し系の醤油ラーメンが特徴の「せたが屋」を繁盛店までに成長させた。
現在は国内外にラーメン店を展開し、5つのラーメンブランドを運営しているわけだが、前島さんはラーメン屋を成功させる秘訣についてどのように考えているのか。
「世間的には“ミスターラーメン”という肩書きで呼ばれたりしますが、私自身も苦労の連続でした。自分が編み出したラーメンの味がお客様に受け入れられずにブランドを撤退させたこともありますし、採算が取れずに閉店させた店も40店舗くらいに上ります。
要は、それだけラーメンをヒットさせるのは難しいということ。全国に数あるラーメン店のなかでお客様に長く愛され、有名店になるまでは相当の努力や、唯一無二の味を見出さないといけない。かつてはちょっと変わった趣向のラーメンを作ったり、奇をてらった打ち出しをすればメディアに取材され、知名度が上がりましたが、今ではお客様のラーメンに対する舌がこえている状況。話題性だけでは、一過性の盛り上がりで終わってしまいます」
おいしいラーメンを作るのはもちろん、店主のストーリーやブランドの見せ方、立地選び、出店するタイミング……。あらゆる要素が整うことで、初めて繁盛するラーメン店になりうるという。
「このような状況でラーメン店をヒットさせるには、ある程度の辛抱強さを持って、目の前のお客様に渾身の一杯を提供し続ける気構えが大切になってきます。当たり前のことですが、毎日丹精込めて仕込みから調理までを行い、味をぶらさないようにすること。小さいことを積み重ね、ラーメン職人としての情熱を持って粛々とやっていくのが基本だと思います。
もちろん、カンフル剤として期間限定のキャンペーンで話題化を狙うのもいいですが、一時的な繁盛で終わってしまうので、根底にあるラーメンへの熱意を絶やさないことが何よりも大事になってくるでしょう」
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ラーメンをヒットさせるのは、並大抵のことではない
有名になるまで辛抱強く、渾身の一杯を提供し続けること
1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている
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