海外メディア記者から見た東京五輪「日本の報道はあまりに『内向き』」
空前のメダルラッシュに沸く一方で、指数関数的な広がりを見せるコロナ第5波……。徹底したコロナ対策の下、多くの制約に喘ぎながらも取材に励む海外メディアの記者たちの目に日本はどう映っているのか?
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「3分離れたホテルに泊まっている妻と、数分会うことさえ許されないんだ。僕はワクチンを2回打ったし、PCR検査は毎日陰性だというのに!」
感染防止に必要なルールをまとめた「プレイブック」による行動制限の厳しさを訴えるのは8度目の五輪取材で来日中のスペインのベテランテレビ局スタッフ、ディエゴ氏だ。先に来日した妻は五輪組織委員会関係者だという。
「外には警察官もたくさんいて、常に一挙手一投足を監視されている。こっそり妻に会いに行くなんて、怖すぎてできないよ。一緒に来たメディア関係者には、規制に耐えかねてスペインに帰った仲間が何人もいるんだ」
ディエゴ氏は勘違いしていたが、警察官はテロ対策の立哨(りっしょう)警備で、「外国人のメディア関係者が出歩いていても声かけはしません」(愛知県警の応援部隊)とのことだ。
リオやロンドンなど、これまでの五輪取材では「現地の人と30人は友人になった」と話すほど社交的な人柄のディエゴ氏だが、今回は「生活する権利がないと感じてる。スペインの広々した空や海や自由、それに家族や友達がすごく恋しい。できることならすぐ帰国したいよ……」と嘆く。
五輪関係者が多く宿泊する有明のビジネスホテルに宿泊し、海外メディア関係者への取材を続けると、みな一言目には「暑いね」と東京の酷暑にまいった様子だ。
驚くことにホテル内では、我々のような一般客と首にパスを下げた五輪関係者の動線は分けられていない。組織委員会から派遣された警備員が常駐し、健康状態や入国からの日数を示すアプリを提示して出入りをチェックすることになっている。
だがみな素通りだ。警備員に聞くと「皆さん見せてくれませんが、強制もできませんから」と苦笑いしていた。
以前からコロナ対策の中心となるバブル方式の不徹底が指摘されていたが、改善されていない。それでも海外メディア関係者がウイルスを拡散させることはなさそうだ。国際的なスポーツイベントの取材は多忙を極める。コロナ禍で人員を絞ったためなおさらだ。また、スポーツ報道のエース級が揃う五輪では報道陣のプロ意識が高く、行動を慎んで仕事に専念している印象を強く受けた。
イラン人のジャマリ氏は『ヴォーグ』や『ニューヨークタイムス』といった有名誌にも寄稿するベテランのスポーツフォトグラファー。5度目の五輪取材だという。
「開催中は、グルメ巡りや外出なんて考える余裕はないんだ。朝からプレスセンターと会場を行ったり来たりして午前1時にホテルに帰ってくるから、毎日3時間しか眠れてない。運営は頑張ってる印象を受けるけど、一番の問題は、無観客で、この大会がとてもつまらないことだね……」
異様なコロナ厳戒態勢の下、奔走する海外記者の胸の内
一般客と五輪関係者の動線が分けられていないホテル内
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