更新日:2021年09月08日 17:30
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「スマホで撮れば盗撮じゃない」盗撮犯のあきれた妄想を、専門家が解説する

自分に都合がいいものだけを取捨選択する

盗撮をやめられない男たち

『盗撮をやめられない男たち』では、なぜ盗撮に走るのか、そのメカニズムについて治療の最前線に立つ斉藤章佳氏が詳しく解説する

 加害者は、その行為を正当化するために「暗黙理論」というものを持っています。これは、社会にある情報から自分に都合のいいものだけを取捨選択し、その考えをさらに強化していくことです。  例えば、インターネットである商品をネット通販で購入すると、AIがユーザーに興味・関心のありそうな広告を自動的に画面上に表示します。SNSにしても、友人やフォロワーには必然的にそのユーザーの意見に賛同する人、拍手をする人が集まりやすくなります。

自分を正当化するために物語を作り上げる

 実は、性犯罪加害者もそうやって作り上げた物語の中を生きています。痴漢は、「電車内には、痴漢をOKしてくれる“痴漢OK子ちゃん”がいる」といった類いの情報ばかりに無意識にアクセスしているのです。同様に、盗撮加害者は「盗撮されたい女性もいる」というフィクションに執着します。ネット上で目にするこうした男性たちのコメントは、「性被害に遭うことを望んでいる被害者がいる」と本気で信じ込んでいるようです。

「認知の歪み」の唖然とする中身

ここからは、実際に盗撮加害者521人からヒアリングした「認知の歪み」の実例を挙げ、解説していきたいと思います。 (1)相手に気づかれていなければ、相手を傷つけないしOKだ。 (2)あれだけネットで盗撮画像が出回っているということは、それだけ簡単に盗撮できるということだ。 (3)痴漢行為と比べて、相手に触れないからそれほど大したことではない。  盗撮は相手に触れない「非接触型」の性犯罪です。そのため直接相手に触れる痴漢と比べることによって、自分の問題行動を矮小化します。このパターンの認知の歪みに陥る盗撮加害者はもっとも多いといえます。加害者は盗撮によって被害者が何を奪われるかをまったく想像できず、自分のやっていることはそれほどひどいことではないと本気で思い込みながら、盗撮行為を繰り返すのです。
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スカートをはいているから盗撮はOK!?
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精神保健福祉士・社会福祉士。大船榎本クリニック精神保健福祉部長。1979年生まれ。大学卒業後、榎本クリニックでソーシャルワーカーとして、アルコール依存症をはじめギャンブル・薬物・性犯罪・DV・窃盗症などの依存症問題に携わる。専門は加害者臨床で、2000人以上の性犯罪者の治療に関わる。著書に『男が痴漢になる理由』『万引き依存症』『盗撮をやめられない男たち』など多数

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