更新日:2021年09月08日 17:30
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「スマホで撮れば盗撮じゃない」盗撮犯のあきれた妄想を、専門家が解説する

盗撮は「相手に受け入れられている」と思い込む

 逮捕を恐れながらも、相手に受け入れてもらっているという矛盾した認識を抱えた彼らは、周囲をまったく客観的に見ることができていないのです。これは、痴漢行為でもしばしば見られる傾向です。 (9)有意義なマスターベーションをするために盗撮することは仕方ない。  この認知の歪みは、特に盗撮を始めた初期にとらわれやすい思考パターンです。自己使用目的(マスターべーション目的)で始めた人も、次第に「盗撮のための盗撮」に移行していくのが、常習化する盗撮加害者の典型的なパターンです。

スマホで撮るのは盗撮ではないという理屈

 駅構内に貼ってある「痴漢は犯罪です!」というポスターを見て、「俺がやっている行為は、すれ違いざまにわからないように触るだけだから犯罪ではない」と考え、「スマホで撮るのは盗撮ではない」と言わんばかりの言い分です。 (10)(「盗撮は犯罪」というポスターを見て)俺のやっているのはスマホで撮るだけで、デジカメや小型カメラを使うわけではないから犯罪ではない。  本当に都合のいい捉え方ですが、悲しいかな、これが彼らの目に映る現実なのです。また、この認知の歪みは、痴漢加害者にも見られるものでした。 ほかにも、「のぞかれやすい建物にした建築士のほうが悪い」というのもありました。 加害者臨床の現場に長年関わっている専門家の私ですら、このような認知の歪みに唖然とすることがあります。

盗撮脳、痴漢脳になる加害者たち

 これを読んでいるみなさんが嫌悪感を抱くのも当然のことです。 いずれも彼らの思考には、被害者の存在が完全に抜け落ちていますし、この歪んだ認知は、問題行動を繰り返し成功するほど強化されていきます。まるで鍋の底にこびりついた焦げのように、ちょっとやそっとでは落ちないほど強固なものになっていきます。 これは私が作った造語ですが、盗撮加害者は盗撮を繰り返すうちにやがて「盗撮脳」に、痴漢加害者は痴漢を繰り返していくうちに「痴漢脳」になっていくのです。 <斉藤章佳  構成/SPA!編集部>
精神保健福祉士・社会福祉士。大船榎本クリニック精神保健福祉部長。1979年生まれ。大学卒業後、榎本クリニックでソーシャルワーカーとして、アルコール依存症をはじめギャンブル・薬物・性犯罪・DV・窃盗症などの依存症問題に携わる。専門は加害者臨床で、2000人以上の性犯罪者の治療に関わる。著書に『男が痴漢になる理由』『万引き依存症』『盗撮をやめられない男たち』など多数
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盗撮をやめられない男たち

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