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パ・リーグまさかの番狂わせ。ロッテとオリックスはなぜ強いのかを分析してみた

若手を知る中島監督の我慢の起用

 では、宮城や杉本、その他の若手選手の躍進の理由は何なのか? 「中嶋監督になってから、オーダーをほぼ固定したことが大きいでしょう。その姿勢がもっとも表れているのが、紅林弘太郎の起用です。思い切りのよい打撃が持ち味ながら、まだ粗さも目立つ選手ですが、打率が振るわなくてもずっとショートで固定され、場数を踏んでいる。打率は低いですが、不気味な存在になってきました。  ホームランを量産する“ラオウ”こと杉本も、開幕直後は安定感がありませんでしたが、我慢強く起用し続けたことで4月中旬以降になって見事に才能が開花。福田周平や宗佑磨のコンバートについても、2軍で監督していた際に彼らの適性をよく見ていた中嶋監督だからこそできた采配でしょう」(キビタ氏)  確かに今年のオリックスのオーダーを見ると、よほどの野球通でないと知らない選手が並ぶこともしばしば。ヘタをすればファンやOBに批判を浴びかねない若手選手たちの我慢の采配が、見事にハマったことも大きかったようだ。

ロッテ・オリックスに不安要素はあるのか

 そんな2チームの不安要素があるとすればどこなのだろうか? キビタ氏は指摘する。 「ロッテは若手の藤原恭大が覚醒し、我慢して起用してきた安田尚憲も上昇気配が出てきて明るい材料はありますが、ここまでやってきた“粘りの野球”が仇になるかもしれません。 一度歯車が狂ったらチームの勝ちパターンが崩壊する危険とは背中合わせですし、投手力のある楽天や巨大戦力のソフトバンクが猛烈な連勝スパートを切ってきた場合は、一気に追い抜かれる可能性がある」   チーム力でコツコツと勝ちを積み上げてきたロッテは、井口監督や吉井コーチらのベンチワークで連敗しないことがカギになりそうだ。  「オリックスは、選手層という意味ではまだまだ。現在活躍中の主力選手が欠けると途端に急失速する可能性がありますね。また、優勝経験がない選手がほとんどという現状にも不安はある」  この指摘通り、チーム屈指のスラッガー・吉田正尚がケガで戦線離脱してからは、打線が下降ぎみで負けが混んできている。吉田のケガは長引くという報道も出ているだけに、オリックスは苦境に立たされていると言えるかもしれない。

優勝争いは最後まで目が離せない

 ここまで驚異の快進撃を続けるロッテやオリックスについて語ってきたが、優勝争いは戦力豊富な楽天やソフトバンクまでの4チームが絡んでくることになりそうだ。果たして“リーグ優勝”という栄光を勝ち取るのはどのチームなのか? 今年のパ・リーグは最後まで目が離せない――。 【キビタキビオ氏】 “炎のストップウオッチャー”の愛称で知られる野球ライター。『野球太郎』(廣済堂出版)、『がっつり!プロ野球』(日本文芸社)ほかで執筆するほか、『球辞苑』(NHK-BS1)に出演中。 取材・文/木田トウセイ
テレビドラマとお笑い、野球をこよなく愛するアラサーライター。
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