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【警告】バカで野蛮なアメリカ経済の行方

藤井厳喜

藤井厳喜氏

――2012年11月に大統領選を控えているアメリカですが、経済の現状をどのように考えていますか?

藤井厳喜 「近著『バカで野蛮なアメリカ経済』で指摘した第二次ITバブルは、私の予測通りアメリカで拡大中です。おそらくフェイスブックが上場される5月上旬くらいにいちばん株式市場は盛り上がるのではないでしょうか。ですが、これはオバマ政権が再選をにらんで人為的に仕掛けられた株式ブームなので、バブルはそんなに長い間、継続しないと思います。確かに今のところ、シリコンバレーやウォールストリートの思惑通り、ブームは確実に拡大中です。その恩恵を被る人々もそれなりに多いので、関係者の間では、大変はしゃいだ雰囲気が広がっており、一時、アメリカ社会に蔓延していた強欲資本主義への反省が一気に吹き飛んでしまった感じもあります」

――アメリカ経済全体が調子がよいのでしょうか?

藤井 「決して、そういうわけではありません。今回のSNSを中心としたバブルの恩恵を被るのは、あくまで業界関係の一部の人たちだけです。潜在的な失業率は高いですし、大学の学費の高騰で、学生ローンの返済が出来ずに個人破産する20代の若者の数も急増しています。実は、ウォールストリート占拠運動の大きな原因の1つになっていたのが、この学費ローン破産なのですが、占拠運動は力づくで解散させられましたが、ローン破産のほうは益々酷いことになっています。失業率に関しても、オバマ政権は盛んに、その改善ぶりを訴えていますが、失業者と本来望んでいないにも関わらず、パートタイム労働についている人達を合わせると、失業率は20%にもなるという調査を世論調査の老舗であるギャラップ社が発表しています。これが2月の数字です。一般のアメリカ人からすれば、第二次ITバブルの恩恵を被るのはごく一部の人であり、アメリカ経済全体が回復基調にあると考えるのは、明らかに間違いでしょう」

――実体の経済はあまりよくはないと。では『量的緩和第3弾』はあるのでしょうか?

藤井 「微妙なところですが、私はあると思います。景気回復とはいっても、力強さを欠くものなので、さらにテコ入れしないと景気の回復基調が秋口にも崩れ始めてしまいそうです。これをテコ入れする為に、6月くらいから所謂「QE3」を開始する可能性が高いと思っています。QE3を開始すると、ドル資金がまた大量に市場に供給されるわけですから、再び円高ドル安トレンドが始まるのではないかと、心配しています。今の日本の株高を支えている条件の一つは、明らかに円安トレンドですから。QE3で再び円高傾向が始まれば、たちまち日本株も悪影響を受けることになるでしょう。もう一方で、日本の株高を支えているアメリカの株高は、QE3が開始されれば、さらに上昇トレンドに入ると思います。しかしアメリカの株が上がっても、再び1ドル=70円台の円高になれば、日本の株式上昇は反転せざるを得ない。日本の現在の株高は、実績相場ではなく、あくまでも金融相場であることに気を付けるべきでしょう。日銀も米FRBの後をついてゆくように、おずおずと量的緩和を行なってはいますが、とてもその規模がアメリカとは違います。日銀の少々の量的緩和の効果などは、アメリカでQE3が始まれば、たちまち消し飛んでしまいます。日本の株高は残念ながら極めて短期で終了すると予測しています」

――11月のアメリカ大統領選挙はどのように予測されていますか?

藤井 「オバマ大統領再選の可能性が高まっています。アメリカの実体経済は、必ずしも良好ではないのですが、何と言ってもSNSバブルの仕掛けが上手くいっていますので、QE3の効果と合わせて経済はオバマに有利な方向に進んでいるといってよいでしょう。ある意味で、オバマの狙い通りの展開となっています。逆に、共和党から見れば、オバマ政権を決定的に追及する争点を見つけることに苦労するでしょう。共和党の大統領候補は元マサチューセッツ州知事のロムニー氏に決まりそうですが、ロムニーは、共和党をまとめ上げる力量に欠けていますし、何といっても大衆人気が盛り上がっていません」

――『バカで野蛮なアメリカ経済』の最後で言及されている「ビッグデータ」についてですが、3月にアメリカを取材されて何か新しい発見はありましたか?

藤井 「日本では、一般の人はまだビッグデータについて、まだまだ無関心のようで、これがアメリカ政治(大統領選)がらみでもあるという事は尚更、理解されていませんが、ビッグデータ社会は必ずやってきます。IT関連業界だけではなく、社会全体を飲み込んでゆくトレンドになっています。ビッグデータについて語ることなしに、近未来の経済を予測することはできません。ビッグデータと関連したテーマには、バーチャル・マネーというものも今後、無視することのできない大きな経済現象になってくると思います。フェイスブックは、フェイスブック・クレジットというバーチャル・マネーを導入していることは既に皆さん、ご存じだと思います。こういったインターネット上のバーチャル通貨がグローバルに益々増殖し、国家の統制の外側で、国際経済にも大きな影響を及ぼす存在となってゆくでしょう。国際地下経済のアングラマネーが、バーチャル通貨に変身してゆくだろう、と書籍の中で予測しましたが、この予測は確実にリアリティーになりつつあります。取材旅行でその確信を強くしました」

アメリカの最先端の動きやビッグデータ化のトレンドについては、「藤井厳喜×渡邉哲也『バカで野蛮なアメリカ経済』発売記念トークショーを4月1日(日)に新宿ブックファーストで開催! 詳細は下記のとおり。<構成/石蔵仁恵>

◆藤井厳喜×渡邉哲也「バカで野蛮なアメリカ経済」発売記念トークショー
日時:4月1日(日) 【開場時間】16:15 【講演時間】16:30~17:30
定員:40名 (先着40名に達した時点で終了とさせていただきます。)
場所:ブックファースト新宿店・地下2階Fゾーンイベントスペース
要整理券:同店にてトークショー整理券(税込500円)を事前にお買い求めください。ブックファースト新宿店Dゾーンカウンターにて販売中。詳細はブックファーストHP、またはブックファースト新宿店TEL03-5339-7611(代)まで
お問い合わせ先:ブックファースト新宿店 TEL03-5339-7611(代)
http://www.book1st.net/

【藤井厳喜】
国際政治学者。拓殖大学日本文化研究所客員教授、ケンブリッジ・フォーキャスト・グループ・オブ・ジャパン代表取締役、モンゴル国際経済商科大学客員教授、日米保守会議兼理事兼事務局長などを務める

バカで野蛮なアメリカ経済

2012年11月に米大統領選挙、「ドル安」の行方から
SNS(ビッグ・データ)がもたらす恐怖の近未来予測まで




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