コロナ感染で窮地!トランプ大統領、逆転勝利狙う最後の“秘策”とは?/町山智浩
「今夜、妻と私は新型コロナウイルスの陽性と判定された。ただちに隔離と回復のためのプロセスを始める。ともに乗り越えよう」
10月2日、トランプ大統領はコロナに感染したことをツイッターに投稿。高熱が出るなどの症状が見られたため、首都ワシントン近郊のウォルター・リード陸軍病院に大統領専用ヘリコプターで移送された。その後、抗ウイルス薬「レムデシビル」を投与されたと報じられているが、11月3日に迫った大統領選挙への影響は必至の状況だ。
トランプ大統領の新型コロナに対する発言を振り返れば、「(ウイルスは)暖かくなれば奇跡のように消える」(2月)、「1分でやっつけてしまう消毒剤がある。体内に注射できないだろうか」(4月)と未知のウイルスを軽視し、米国市民と“ともに乗り越える”努力を怠ってきたと言わざるを得ない。
実際に米国の新型コロナによる死者数は20万人を超え、世界全体の20%を占め、もっとも多い。
9月29日、大統領選の目玉である1度目のテレビ討論会が開催され、民主党の大統領候補・バイデン前副大統領は「マスクをつけていたら10万人の命が救われた」などと現政権のコロナ対策を厳しく批判するも、大統領は「君の意見を聞いたら、何百万人も死んでいただろう」と逆ギレ。
そのわずか3日後、皮肉にもメラニア夫人と揃って陽性が判明したのだから、「特大ブーメラン」というほかないだろう……。
混迷を極める米大統領選の行方はどうなるのか? カリフォルニア州を拠点に精力的に大統領選の取材を続けるジャーナリストで映画評論家の町山智浩氏に話を聞いた。
――トランプ大統領の新型コロナ感染は、選挙戦にどう影響しそうか。
町山:終盤のまさに追い込みの時期に、トランプ大統領がもっとも得意とする選挙活動である集会ができなくなった。大統領選が始まると、トランプ大統領は公務より集会を優先し、専用機で、選挙ごとに勝利政党が変わるスイング・ステート(揺れる激戦州)を回っていたが、当面の予定はすべて白紙に。
9月29日の討論会ではコロナ対策を「グレイト・ジョブ」と自画自賛し、中国が悪いとまくし立てた。マスクもせず、ソーシャルディスタンスも保たないトランプ大統領のコロナ対策には批判も多かったが、大統領のコロナ感染によって、図らずも政策の誤りを自らが証明してしまった格好です。過去に類を見ない“オクトーバー・サプライズ”と言っていいでしょう。
――再選は厳しいということか。
町山:トランプ大統領のコロナ陽性が伝えられると、株価は急落。ダウ平均は一時400ドル以上も値を下げています。そもそも9月に入ってからは、コロナの影響による経済活動の萎縮により株価は下げていた。特にトランプの支持基盤である石油、鉄鋼などの旧産業のダメージは大きい。
過去の大統領選を振り返れば、投開票日の直近3か月で株価が急落し、回復しなかったときの選挙で、再選した大統領は一人もいない……。歴史に倣えば、トランプ再選の可能性は極めて低いと言えるでしょう。
――トランプ大統領は74歳で体重は100Kgのため、重症化のリスクが高い。一方のバイデン候補も当選すれば史上最年長78歳での大統領就任。1期のみで退くことも示唆しており、緊急時に大統領職を引き継ぐ副大統領候補の争いも注目されている。
町山:民主党の副大統領候補はカマラ・ハリス上院議員。これまでの副大統領候補のなかで、もっとも大統領選の得票に影響を及ぼしそうな候補者です。ハリス議員は元地方検事で、政治的には警察寄りの中道派と見られており、BLM運動に対してもこれと言ったメッセージは出していない。
そのため左派からは一定の反発はあるが、数の多い警察関係者たちから嫌われていないのは強みとも言える。
コロナ感染で窮地!トランプ大統領逆転勝利狙う最後の“秘策”とは?
「歴史に倣えば、トランプ再選の可能性は極めて低い」
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