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自粛警察と会社の仕組みは似ている。末井昭「コロナ禍で日本はボロが出た」

日本は想像以上にアナログだった

——日本ではなんとなく「みんな平等だ」みたいな風潮があるじゃないですか。そういった風潮もコロナ禍によって崩れさった感じがあります。誰でも平等に医療を受けられるわけでもなく、ワクチン接種希望者の中でもまだ打てていない人がいますし。 末井:もともと「みんな平等」なんてはずがないんですけどね。ただ、日本の場合で言うと「社会が変わった」というよりも「ボロが露呈した」感じはありますよね(苦笑)。こんなにデジタル環境が遅れてる先進国ってないんじゃないですか。役所とか銀行に行っても、いまだに「印鑑がいる」とか「住民票がいるとか」とか、手続きがアナログじゃないですか。日本って先進国のように言われているけど、かなり後進的だなと思いました。コロナ禍によってそういうボロが出たところはあると思います。  一時、「保健所がファクスでやりとりしていた」なんていうこともニュースになって「今どき?」なんてみんな驚いたけど、それまでの日本には感染病がそんなになかったこともあり、保健所って暇だったらしいです。急にコロナ禍が始まって寝る暇もないくらい忙しくなったらしいけど。このように日本って世界の先進国に比べれば、何から何まで遅れていたってことですね。

「自分」を優先させると、格差や分断が広がる

 あと、コロナ禍で嫌だなと思うのは、格差や分断が広がることです。国単位で言っても、例えば「自分の国にワクチンを多く欲しい」と思っても、結局はお金を持っているところが優先的にワクチンを集めることができるでしょう。お金がない国はワクチンが集められないから、大勢の人が亡くなっていくだろうし、結果的に発展も遅れるだろうし。  何も国単位の話でなくても、人間同士でもそういったことは起こりうることで、これは良くないことだなと思います。  余談だけど、コロナ禍が始まった頃に、「これでやっと世界が一つになれる。世界が一致団結して『新型コロナウイルス』という共通の敵に立ち向かっていくようになる」って言っていた人がいましたけど、そんなことはあり得ないですよ(笑)。  さっき言ったように僕自身も「死」を意識し始めたわけですけど、みんな自分の命、自国を守ることを最優先に考えるわけですから、他者とか他国と「一丸になる」というのはあり得ないことだと思います。むしろ、その自分だけ、自国だけのことを最優先に考えた結果、格差とか分断は際立つだろうし、それが恐ろしいと思っています。
格差と分断

コロナ禍で格差と分断が際立つ、と末井さん(撮影:末井昭)

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自粛警察は会社の仕組みと似ている
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音楽事務所、出版社勤務などを経て2001年よりフリーランス。2003年に編集プロダクション・decoを設立。出版物(雑誌・書籍)、WEBメディアなど多くの媒体の編集・執筆にたずさわる。エンタメ、音楽、カルチャー、 乗り物、飲食、料理、企業・商品の変遷、台湾などに詳しい。台湾に関する著書に『パワースポット・オブ・台湾』(玄光社)、 『台北以外の台湾ガイド』(亜紀書房)、『台湾迷路案内』(オークラ出版)などがある

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