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峯田和伸 “コロナで全ライブ中止”を語る「生のすごさはスマホやPCでは伝わらない」

 いわゆるメジャー、インディーのカテゴリーを飛び越え、類い稀な存在として絶大な人気を誇るロックバンド「銀杏BOYZ」。人気の理由は、時代の矛盾を鋭く斬った歌詞、激しいサウンドとライブパフォーマンスにあるが、その主戦場となる“ライブ”がコロナ禍の影響でできなくなって1年以上。銀杏BOYZのボーカル・峯田和伸は今、どんな心境で過ごしているのだろうか。
峯田和伸

銀杏BOYZの峯田和伸

 また、銀杏BOYZとしての活動とは別に行う役者業では、7月より『物語なき、この世界。』の舞台公演を控えているが、ライブと舞台の違いや、“生”でしか味わうことができないエンターテインメントの魅力について話を聞いた。

コロナ禍で、銀杏BOYZのライブが全てキャンセルに…

——コロナ禍の影響で、銀杏BOYZのライブがしばらく行われていませんね。 峯田和伸(以下、峯田):本当は去年の4月からライブをやり、その後全国ツアーをやる予定でした。ただ、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、延期をしたり、配信ライブを2度やったりしていたけど、「いつ再開できるかわかんない」ってことで、全部いったんキャンセルすることにしました。  お客さんからもいろんな意見をもらうんですよ。大別すると「無観客でもなんでもいいから、とにかく音を出して欲しい」っていう意見もあれば、「いや完全に新型コロナが収束するまではやらなくていい」っていう。  誤解を恐れずに言うと、僕にも両方の思いがあって。本音を言えば、僕も今すぐにでもお客さんの前で思いっきり音を出したい。だけど、「銀杏BOYZのライブ」ってことで言うと、演奏する側が音を出せば良いってことではなくて、お客さんの叫び声……「峯田ー!」とか「死ねー!」とかも含めて成立するものなので。  だから本当に残念ではあるけど、いったん全部キャンセルすることにしました。正直辛いですよ、「ライブができないこと」とか「ライブ」ってことを考えると。でも、「今年はちょっとできないな」と思って全てキャンセルしました。  ただ、これは発信する側にとって、いろんな考え方があっていいとは思うんです。感染防止対策をできる限りとってライブをし続けるバンドもあるし、無観客ライブをし続けるのも一つの手段だし、あるいは投げ銭を得ながらやる気持ちもよくわかる。  だから、それぞれが、それぞれのやり方を真剣に考えて、「ライブ」ってことのやり方、または控え方を見出してるんじゃないかなと思います。  銀杏BOYZのライブがいつ再開できるかはわからないけど、大丈夫です。近い将来絶対やるし、それまでに良い曲をいっぱい作りたいと思っています。

「バンドのライブ」「生の舞台」の共通点は何か?

峯田和伸——そんななかですが、7月からは三浦大輔作・演出の舞台『物語なき、この世界。』に出演されますね。これはどうしてですか? 峯田:出演を決めた一番の理由は、数年前から三浦さんにお誘いいただいて「もともと決まってた」っていう。また、舞台は「銀杏BOYZとしてのライブ」はキャンセルしたけど、舞台は三浦さん、他の役者さん、スタッフの方と作っていくものだし、「峯田ー!」「死ねー!」とかがなくてもできますから。それで7月より出演させていただくことになりました。 ——峯田さんの舞台出演は今回が2度目です。銀杏BOYZのライブと舞台での違い、あるいは共通点はありますか? 峯田:「ステージを作る」「取り組む」ってことで言うと、あまり変わらないんですよ。  バンドだと、1曲1曲を完成させるためには、何度もリハーサルして、休憩で喫煙所に行って、帰りにみんなでメシ喰って。「そう言えばあの映画観た? メッチャ面白いよ」みたいな話をして「お疲れっす!」みたいな感じです。  これは演劇の稽古場も同じで、演出家である三浦さんと役者さんと何度も稽古を繰り返して、あーだこーだ言いながら完成に近づけていくという。だから、作り方は僕にとっては同じですね。 ——お客さんの反応はどうですか? 銀杏BOYZのライブだと、ステージから鳴る激しいサウンドに対して、お客さんも汗ダクで叫び声も多い印象ですが、舞台のお客さんはシーンと見守っている感じですよね。 峯田:ただ演じるシーンによって、お客さんが息を呑んだり、ハラハラしたり……その様子が波動みたいな感じで演者のほうにも伝わってきますよ。それは仮に演者がお客さんのほうを向いていなくても伝わってきてゾクゾクするものです。あれはイチ公演ごとに違うもので、すごく面白いですね。  不特定多数の人たちが集まったときの空気感とか波動みたいなものは、バンドでのライブも舞台もそう変わらないかもしれない。 「お客さんが汗を流して叫ぶ」というライブは、銀杏BOYZとしては控えることにしたけど、「お客さんがジッと楽しむ」という舞台でも、こういう面白さを感じられると思います。やっぱり「生」って画面では感じることができないすごさがあるんですよ。
物語なき、この世界。

Bunkamuraシアターコクーンで7月11日~8月3日まで公演される三浦大輔作・演出の舞台『物語なき、この世界。』

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「生」のすごさは、スマホやパソコンでは伝わらないもの
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音楽事務所、出版社勤務などを経て2001年よりフリーランス。2003年に編集プロダクション・decoを設立。出版物(雑誌・書籍)、WEBメディアなど多くの媒体の編集・執筆にたずさわる。エンタメ、音楽、カルチャー、 乗り物、飲食、料理、企業・商品の変遷、台湾などに詳しい。台湾に関する著書に『パワースポット・オブ・台湾』(玄光社)、 『台北以外の台湾ガイド』(亜紀書房)、『台湾迷路案内』(オークラ出版)などがある

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