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自粛警察と会社の仕組みは似ている。末井昭「コロナ禍で日本はボロが出た」

自粛警察は会社の仕組みと似ている

——一時期話題になった自粛警察みたいなことをどう思いましたか? 末井:ああいうのは、社会の混乱期に出てくるんですよ。戦時中に隣組なんていうのもあったし、関東大震災のときも自警団が「多くの朝鮮人を殺した」なんていう話もあります。だから、日本人の中に、自粛警察みたいな行為に憧れるという潜在意識があるんじゃないですかね。ふだんは権力を持つことができない人が「正義」の名のもとに群れ始めて、横暴なことをするっていう。「国が『不要不急の外出は自粛しなさい』と言っているのに、なんだ、店を勝手に営業して。許さん!」ということだと思うけど、これをすることがきっと気持ちいいんじゃないかと思います。  会社とかも、自粛警察と似たところがあります。会社って組織でしょう。組織ということはチームになるから、会社側は社員にそれなりの役職を与えているわけ。部長、課長、係長とかですけど、そういう役職を与えられると、当の本人も気持ち良くなっちゃって、たとえば部下なんかに威張ったりするわけです。「仕事が終わったら飲みに行くぞ!」みたいな(笑)。  そう言われて、部下はいやいやついて行くんだけど、部長の自慢話を聞かされた挙句に「仕事がなっとらん」みたいに怒られたりして。こんな時間、部下にとっては苦痛でしかないんだけど、部長にとっては「会社の正義」という大義名分があるから迷いはないし、むしろそうやって部下に権力をふりかざすことが、気持ちいいわけですよ(笑)。役職なんてさ、組織を運営する上でそれなりに与えられたものでしかなく、会社がなければ別に偉くもなんともないんですけどね。リモートワークになって、上司と付き合わなくてよくなったからほっとしている人っていっぱいいますよ、  このように、自粛警察と会社の構造はなんか似てると思ったけど、おそらく日本人は「団体で何かをやる」「それによって権力をふりかざす」ということが潜在的に好きなんじゃないかとも思います。

コロナ禍では誰もが「自分ファースト」になっていく

――末井さんが取締役編集局長を務めた白夜書房時代は「できるだけ権力を公使しない」という指針で働いていたと聞いています。 末井:部下にタバコを買いに行かせる社員がいましたから。そういうの気持ち悪いでしょ。誰とも上下関係なくつき合いたいし、権力のない生活をおくりたいですよ。でも、会社に勤めていた頃は、一応役職に就いていたから権力はあったんです。でも、それをできるだけ行使しないようにして、制約もできるだけなくして、社員のみんなが仲良くしてもらって、みんなにとって楽しい環境になるといいなと考えていました。  ただ、今はコロナ禍ですからね。また違う問題があると思います。皆が皆、「自分ファースト」になっていくわけですから。 <取材・文/松田義人(deco)> 音楽事務所、出版社勤務などを経て2001年よりフリーランス。2003年に編集プロダクション・decoを設立。出版物(雑誌・書籍)、WEBメディアなど多くの媒体の編集・執筆にたずさわる。エンタメ、音楽、カルチャー、 乗り物、飲食、料理、企業・商品の変遷、台湾などに詳しい。台湾に関する著書に『パワースポット・オブ・台湾』(玄光社)、 『台北以外の台湾ガイド』(亜紀書房)、『台湾迷路案内』(オークラ出版)などがある
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