更新日:2021年11月01日 14:36
エンタメ

<純烈物語>2年3か月追い続け、紡いだアルバムとは違うクロニクル<最終回>

プロフェッショナルでありスター・白川との”ドライブ”

 華をまとっていても、それが他者にとっての敷居とはならず惹き込む力として放たれている。歌に対し真摯であり、もっともプロフェッショナルの姿勢を感じたのも白川さんでした。  当連載書籍化第1弾『白と黒とハッピー~純烈物語』発刊記念イベントで「普段の取材では言ったことの7、8割がカットされてしまう。でもこの本は全部、僕の言った言葉で書かれていました。自分たちの言葉を大切にしてくれている一冊です」とコメントをいただいた時は、書き手冥利に尽きると心から思えました。本当に嬉しかったです。  今年8月26日の『純烈ジャー』完成披露舞台挨拶の日は、昼から純烈に密着していました。東映ビデオ株式会社における複数の取材を終えたあと、メンバーは車で会場の新宿・バルト9に向かいます。  そのさい、私も“純烈号”に同乗させていただけることになったのですが、白川さんのみ自分で運転しあとから続くと聞き、それならばはぐれた場合を想定し、会場周辺の土地勘がある私がつきますと助手席に乗り込みました。  こちらからの提案を快く受け入れていただき東銀座から新宿まで、白川さんの運転で20分ほどのドライブ。身に余るシチュエーションであるのを承知の上で、ほぼほぼ初めて交わした他愛もない会話(プロレスの話がほとんど)は、かつてリーダーと小田井さんが出演した『極上空間』のようでした。  長いスパンによる取材だからこそ感じられたお三方の人となりと姿勢。これも私にとっての財産となりました。

「毎週書いてくれるから、アルバムを出す必要がない」

 酒井一圭さん――まさか、このような関係性を築けるようになるとはマッスル時代にはお互い想像もしていなかったと思われます。当連載のプロフィルに「酒井一圭とはマッスルのテレビ中継解説を務めたことから知り合い、マッスル休止後も出演舞台のレビューを執筆」と記されていますが、ずっと一蓮托生で来たわけではなく、むしろ遠いところからその活躍ぶりを傍観している距離感でした。  そんな自分が2019年2月16日、復活したマッスルの両国国技館公演で一圭さんと再会したことから、この物語を掘り下げたいと思いFacebookのメッセージを通じ4年2ヵ月ぶりにコンタクトをとった。それが、すべての始まりです。  いかにも純烈が紅白へ出て、よくなったタイミングですり寄ってきた人間でありながら、こちらの提案を受け入れたのはなぜだったのか。それは今も一圭さんに確認していません。  ただある時、こんなことを言われました。取材の中で「純烈はアルバムを出さないのですか?」と聞いたところ、まったく意表を突いた答えが返ってきました。 「うん、今は出す必要がないと思っている。だって、健さんがこうして毎週書いてくれているから」  勝手な解釈をさせていただくと、リーダーが思うところのアルバムとは音と歌で物語を描くクロニクルなのだと。それを今はテキストとして伝えているから……こうなるのでしょうか。  それを聞いた時、初めて純烈プロデューサー・酒井一圭にとってこの連載がどんな位置づけにあるのかを自分なりにつかんだのです。  書籍化第2弾『純烈物語20-21』のまえがきには「やめどころを失った」などと書きましたが、プロレスに次ぐライフワークと出逢えたというのが本心でした。書いても書いても、伝えても伝えてもなお湧き出る次なるドラマを、ずっと追い続ける。そして文献として残す。  その姿勢は当連載を終える今も、そしてこれからも持ち続けるのでしょう。これほど伝えてきながら、まだ着手していないテーマもいくつかあります。
次のページ
『見上げてごらん夜の星を』で感じたこと
1
2
3
4
5
(すずきけん)――’66年、東京都葛飾区亀有出身。’88年9月~’09年9月までアルバイト時代から数え21年間、ベースボール・マガジン社に在籍し『週刊プロレス』編集次長及び同誌携帯サイト『週刊プロレスmobile』編集長を務める。退社後はフリー編集ライターとしてプロレスに限らず音楽、演劇、映画などで執筆。50団体以上のプロレス中継の実況・解説をする。酒井一圭とはマッスルのテレビ中継解説を務めたことから知り合い、マッスル休止後も出演舞台のレビューを執筆。今回のマッスル再開時にもコラムを寄稿している。Twitter@yaroutxtfacebook「Kensuzukitxt」 blog「KEN筆.txt」。著書『白と黒とハッピー~純烈物語』『純烈物語 20-21』が発売

純烈物語 20-21

「濃厚接触アイドル解散の危機!?」エンタメ界を揺るがしている「コロナ禍」。20年末、3年連続3度目の紅白歌合戦出場を果たした、スーパー銭湯アイドル「純烈」はいかにコロナと戦い、それを乗り越えてきたのか。

白と黒とハッピー~純烈物語

なぜ純烈は復活できたのか?波乱万丈、結成から2度目の紅白まで。今こそ明かされる「純烈物語」。

記事一覧へ
おすすめ記事
ハッシュタグ