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パチンコ業界が警察への忖度をやめた裏事情。きっかけは東京五輪開催――2021年ベスト10

自粛は既定路線だったが……

 ではどうして、今回の東京オリンピックでは入替自粛が行われないのか。新台を販売する側のメーカー関係者によると、またホール関係者からも昨年のコロナ前の段階、つまり世界中から多くの観客が集まり祝祭ムードのなか盛大に東京オリンピックが開催されると誰もが期待していた頃には、入替自粛は規定路線だったという。  実際、旧規則機(パチンコのCR機、パチスロの5号機)から新規則機(P機、6号機)の計画的な移行を即すためにホール団体が示した旧規則機の削減目標においてもオリンピック期間中は空白となっていたが、コロナ禍によってその目標も実質的に白紙に。  本来なら今年の2月には旧規則機が完全に市場から姿を消し、完全な新規則機時代が到来していたはずだったが、昨年の5月にはコロナ禍の影響を鑑みた行政が旧規則機撤去の1年延長を決定。これで延命できたホールも少なくないが、それでも旧規則機の撤去は来年1月末と、もはや待ったなしとなっているのは間違いない。

旧規則機撤廃問題が絡む事情

 設置できる期限は残り少なくなっているとはいえ、それでも旧規則機の占めるシェアは業界団体による5月末の時点でパチンコが約3割、パチスロでは約5割もある。ホール軒数が減り続けているため正確な数字ではないが、昨年末の数字として警察庁が発表した遊技機設置台数から推計すると、パチンコもパチスロもそれぞれ約70万台以上が残っていることになる。  今後も営業を続けていくためには、これだけの旧規則機を約半年という短い時間で新規則機へと入れ替えなければならないのだ。もちろんこれからの半年でホールの廃業ペースも加速すると思われ、同時にベニア入れ替えと呼ばれる遊技機をとりあえず外してベニア板で隠すようなことも増えると予想されるが、それだけせっぱつまっている以上はオリンピック期間中といえども入れ替えをストップできない現状といえるだろう。  今年に入り、まだオリンピックが本当に開催されるかどうか明確になっていないタイミングで行われたメーカー関係者の会合でも「(入替自粛は)やりません」とそれなりの立場の人物が明言したという話もあるが、これは行政への忖度が困難なほど追い込まれていることの表れともいえそうだ。  今年の4月からは、東日本大震災からのパチンコバッシングを理由に自粛していた遊技機のテレビCMも解禁されているが、これも新規則機への入れ替えを促したいというメーカー団体側の意向によるものなのだ。
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業界の懐事情も……
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ライターとして25年のキャリアを持つパチンコ大好きライター。攻略誌だけでなく、業界紙や新聞、一般誌など幅広い分野で活躍する。

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