バンギャと呼ばれるバンド好き女性の間では、バンドマンとつきあうことは、一つのステータスのようだ。しかし、そこには鉄の掟がある。 「実は、M君とつきあうようになったら、彼のライブを観に行くのを禁止されたんです。『彼女がくると良いパフォーマンスができなくなるから』と言っていたのですが、意味不明ですよね。 　そのため、たまにしか観に行けなかったのですが、別のバンドのスタッフをしていたので、対バンの時などは後ろの方からライブを観ていました。打ち上げに出ても、帰りはわざと二人別々の電車に乗って、時間差で帰って彼の部屋に行ったりしていましたね」 　交際を隠せば隠すほど燃え上がるものなのかもしれない。 　しかし、場合によっては都合が良い女にも見えてしまうが……。 「バンドのメンバーにも内緒だったので、スタジオでの練習やミーティングが終わるまでは、寒空の中、ばれないように近くの本屋やCDショップに隠れていました。つきあっているからには、クリスマスも本当ならデートしたかったのですがライブが入っていたんです」 　一般的なカップルならば、クリスマスは2人で過ごすかもしれないが、バンドマンの彼女の場合はどうなのだろうか。 「M君のバンドのクリスマスライブをライブハウスに観に行きました。観に来ているファンも、狭い会場なので顔見知りみたいな感覚なんですよね。その中で、『自分はこの人とつきあっているんだ』って思うと優越感に浸れるんです。