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賛否があった「下北線路街」開発秘話。小田急が気づいたまちづくりで大切なこと

「下北線路街 空き地」の開業がひとつの転機に

下北線路街 空き

“みんなでつくる自由なあそび場”をコンセプトにした「下北線路街 空き地」

 下北沢の持つ「ローカル」な側面と、個性的で多様な「カルチャー」が交わる側面をどう両立させていくか。  橋本さんは、半ば手探り状態でプロジェクトを進めてきたそうだが、ひとつの転機になったのはイベントスペース「下北線路街 空き地」をオープンした時だったという。 「『下北線路街 空き地』の報道記者会見の場に当社の星野社長が登壇し、下北線路街の開発テーマである支援型開発を正式に発表しました。地域の価値観を重視し、街の持つさまざまな魅力を引き出すことで、下北沢への愛着を育む。再開発を通して目指したい姿を世の中に発信したことで、下北線路街に関わる仲間が一気に増えました。『よりよいまちづくりを一緒になって取り組んでいこう』という機運が芽生えた瞬間だったと思っています」

下北沢の“職住遊”を体現したボーナストラック

ボーナストラック

2020年4月に開業した「ボーナストラック」。下北沢らしい個性的なお店が集っている

 そして、下北線路街の中でも職住遊を体現する複合商業施設「ボーナストラック(BONUS TRACK)」が2020年4月に開業した。  コロナ禍の真っ只中でのオープンということもあり、開業当初は集客に苦労したそうだが、下北沢の街に馴染むような個性あふれる飲食店やショップの独特な世界観は、日を追うごとに注目されるようになる。  今では近隣の住民や、お出かけ目的で来街する人が交わり、賑わいを見せる場所になっている。 「ボーナストラックの発展を見て感じるのは『地元の日常が面白いと、来街者にとっては非日常的になる』ということ。地域に住む人が気兼ねなく日常的に関われるような場を生み出せれば、来街者にとっても魅力的に映り、行ってみたいと思うきっかけになります。新型コロナで急速に自宅中心の暮らしに変わったことで、下北線路街の描くライフスタイルに近づいてきていると感じています」
reload

2021年6月に開業した「reload(リロード)」。週末にはポップアップショップやイベントが開かれている

 ボーナストラック開業以降も、温泉旅館「由縁別邸 代田」や居住型教育施設「SHIMOKITA COLLEGE」、店主の顔が見える個店が集う「reload(リロード)」など続々と新たなスポットが誕生している。
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200回以上の打ち合わせで気づいた「下北沢らしさ」とは
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1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている

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