コロナ禍で「あと半年も持たない」経営状況に……
しかし、事態は一転する。2020年に突如として襲来した新型コロナは、これまでの生活様式を一変させた。
それは日本経済にも大きな打撃を与え、苦境に立たされる事業者も相次いだ。丸山製麺も例外ではない。コロナ禍の煽りを受け、「
会社存続も危ぶまれるほどの危機に直面した」と丸山さんは振り返る。
「コロナになる前の2020年3月までは堅調な成長ぶりを見せていましたが、4月に緊急事態宣言が出されてからは、
売り上げが8割も減ってしまったんです。このままだと、あと半年で資金が底をついてしまう……。そんな状況に陥ったこともあり、
社長からは『もう好きにやっていいから、とにかく会社を立て直してくれ』と言われたんです。そこから、一気に会社を変えていきました。
まず着手したのは社内の
デジタル化でした。スタッフ同士のやりとりはチャットツールを取り入れ、円滑にコミュニケーションができるような体制を作りました。さらには受発注システムを導入し、電話やファックスに頼ったアナログな手法から脱却を図り、業務効率化につなげたんです」
新規事業をいくつも試していくなかで行き着いた「自販機ビジネス」
オンライン通販のECサイト
そして次に取り組んだのは、新規ビジネスの立ち上げだった。
丸山さんにとって、まさに真骨頂とも言えるのが
「0→1」で事業を創ることである。これまでの経験はおろか、日頃からスタートアップ企業やITベンチャーとの関わりを持っていたこともあり、「ビジネスにつながりそうな種は、常にアンテナを張っていた」と丸山さんは言う。
こうしたなか、最初に立ち上げたのはオンライン通販のECサイトだった。
長年築いてきた配送ネットワークや製麺技術を駆使し、飲食店と共同開発した通販商品をネットで売り、巣ごもり需要喚起に取り組んだ。
次に仕掛けたのは、うどんのサブスクリプションサービスだ。
毎月違ったうどんが届き、新しい食の提案を狙う施策として実施したという。
そのほかにも、いろいろなビジネスを考えては実行し、
試行錯誤の末にたどり着いたのが「冷凍ラーメン自販機ビジネス」だった。
「通販サイトは送料が高く、あまり利益が上がらない課題があったので、何か別の方法がないか探していました。そんな矢先、冷凍の自動販売機『ど冷えもん』が昨年の2月に発売されたので、『自販機を使った冷凍ラーメンを出せば面白いかも』というアイデアが浮かんだんです。そこで早速仕入れ、2021年3月に『ヌードルツアーズ』と銘打ってビジネスを始めました。
工夫したのは、他の飲食店が自社の商品を自販機で売る直売所のような使い方をしていたのに対し、当社では『多種多様な味のラーメンが楽しめる
プラットフォーム』にしたことでした。さながら飲料の自販機のように、オーナーさんの意向で商品ラインナップを変えたり、季節によって入れ替えたりできるような仕組みになっています」
1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている
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