更新日:2022年02月09日 18:03
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トンガ噴火で食料危機の真相。お米やマグロにも影響大

一段と不安化する世界の食糧市場

トンガ噴火

食料品の値上げがやまない日本。噴火の影響でさらなる値上げとなるのか

 実際、市場も警戒心を抱えたままだ。1月14~27日の2週間で、米国の小麦先物の3月限の価格は約6%、シカゴコーン先物は約4.6%、大豆先物は約5.6%と値を上げているのだ。主要穀物の先物価格は噴火以前からも上昇傾向にあったが、噴火以降、さらに上昇スピードが高まっているように見える。  資源・食糧問題研究所の柴田明夫氏が話す。 「世界の穀物トータルで見ればここ6年ほど記録的豊作ですが、人口増大や異常気象といった要素を抱えるなか、世界各国は食糧の囲い込みに動いており、世界の食糧市場は一段と不安化している。  特に顕著なのが中国。備蓄は通常、年間消費量の2~3割が適正な量で、世界の年間穀物生産量27億tのうち在庫は8億tありますが、半分以上は中国が持っている。トウモロコシに至っては在庫の7割です。  こうしたなか、今回の噴火によって寒冷化が起きすれば、市場の脆弱性がさらに高まり、食糧の偏在や価格の高騰が起きるでしょう」

冷害を最も受けやすいコメ

 仮に寒冷化が現実のものとなった場合、あらゆる穀物のなかで、冷害を最も受けやすいのが、日本人の主食であるコメだという。 「亜熱帯原産であるコメは、今では品種改良によって北海道などの寒冷地でも生産ができるようになりましたが、極めて寒さに弱い穀物です」  そう話すのは、岩手大学農学部教授で、冷害の研究に取り組んでいる下野裕之氏だ。 「稲は、開花する約10日前に『穂ばらみ期』という生殖生長において最もセンシティブな時期を迎えます。花粉が作られるこの時期に、平均気温が20℃を下回る期間が数日以上続くと、不受精が起き、穂の中にコメが形成されなくなる。地球温暖化が指摘される現代でも冷害の危惧が絶えないのはこのためです。  例えば東北のコメどころでは、この穂ばらみ期を7月下旬に迎えますが、例年の平均気温は21~24℃。地域によっては1℃下がっても冷害が起きる可能性もある」  農水省に今回の噴火の影響を聞くと、「二酸化硫黄の噴出規模はピナトゥボと比較すると限定的で、南半球での噴火なので単純に比較もできない。ただ、火山活動が落ち着いたわけではなく、今後も気象状況などを注視していく」(農業環境対策課)と回答した。
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南太平洋の水質変化がマグロ漁にも影響!?
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