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世界興行収入で『鬼滅の刃 無限列車編』に迫った中国の抗日“プロパガンダ”映画の中身

抗日ドラマも半分くらいは真面目

 
『八佰(エイト・ハンドレッド)』

映画『八佰(エイト・ハンドレッド)』より

「中国の作品ということがネックになって公開されるものは少ないのですが、お金をかけて質も高い作品は数多くあります。映画では『戦狼(日本では『ウルフ・オブ・ウォー ネイビー・シールズ傭兵部隊 vs PLA特殊部隊』のタイトルで公開)』、ドラマでも『我的团长我的团』『亮剣』はおすすめですね」  そう話すのは『中国抗日ドラマ読本: 意図せざる反日・愛国コメディ』『中国テレビガイド』(パブリブ)などの著書がある岩田宇伯さん。中国で製作される抗日戦争を描いた作品の多くを観ている岩田さんは、日本で取り上げられることがある作品は、極わずかなものだと指摘する。 「日本で報道されるいわゆる<抗日ドラマ>も半分くらいは真面目な作品で事実に基づいたエピソードをやっているんですが、あまり取り上げられることがないんですよ」  ただ、あまり真面目な作品というのは、どうしても政治色が出てしまいエンターテイメントとしては面白さに欠けてしまう。これは筆者も聞いたことがあるのだが、特にテレビで放送されている「抗日ドラマ」は、日本での時代劇に近い。ようは暇つぶしに観ている年寄りが主な視聴者層。  ゆえに日本の時代劇にあるような史実を無視したエンターテイメント要素が求められるのだが、それをやり過ぎる作品も中にはあるということだ。岩田さんは「そのジレンマが常に存在している」と語る。

昨年11月に日本でも公開予定だったが……

 一方で「抗日ドラマ」で描かれる時代は、日本軍の戦いのみならず作品を作りやすい時代という指摘も。 「日中戦争期までの中国は各地に軍閥が群雄割拠している時代です。いわば三国志の時代と同じような状況なんです」  ある程度、歴史やミリタリーに興味があれば「なるほど!」と思うのだが、そうでなければ「ふーん」で終わってしまいそうだ。日本の一般的な観客層が興味を示さないジャンルであることが『鬼滅の刃 無限列車編』に次ぐヒットであっても、いまだ話題になっていない理由だろうか。  実は『八佰(エイト・ハンドレッド)』は昨年11月に日本でも公開が予定されていたが新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期になっている状況だ。公開が待たれる。
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中国映画がヒットを連発
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ルポライター。1975年岡山県に生まれる。県立金川高等学校を卒業後、上京。立正大学文学部史学科卒業。東京大学情報学環教育部修了。ルポライターとして様々な媒体に寄稿。著書に『コミックばかり読まないで』『これでいいのか岡山』

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