発売中止の「トランスジェンダー本」には何が書かれているのか…原書を読んだ記者が思ったこと
KADOKAWAが発売中止したことでかえって話題を呼んでいる、アメリカのジャーナリスト、アビゲイル・シュライアーの著書『あの子もトランスジェンダーになっているSNSで伝染する性転換ブームの悲劇』(同社による邦題)。
本書をめぐっては、トランスジェンダーの差別に繋がる「ヘイト本」という批判がある一方で、どれだけの人が読んで批判をしているのかという声もある。この問題をめぐっては、KADOKAWAが事前に保守系知識人にゲラを送付して宣伝協力を依頼していたことなども明らかになり、様々な方向で炎上している。しかし、読んだ人の感想はわずかだ。ただ原書を読んだ一部の人が概要を述べているに過ぎない。では、実際に本書はなにが書かれているのか。その内容を紹介しよう。
本書は、前書き、序章以降全11章で構成されている。まず前書きで、シュライアーが記すのは出版に至る経緯だ。ここでは、この本が出版される前から抗議が殺到したこと。米アマゾンが広告を拒否したことが記される。また、オルタナティブ・メディアによる取材を受けたが、このインタビューがSpotifyで公開されたところ、同社の社員から削除を求める動きが起こったこと。カルフォルニア大学バークレー校の教授から「この本を盗み、火刑台で燃やすことを進める」とまでツイートされたことを記している。その上でシュライアーは、
「どのような考えや人々が解雇され、辱められ、締め出され、黙殺されるべきかをめぐるアメリカの戦いという、キャンセルカルチャーの歴史に名を残すことになった」
と、記すのである。
「序章」では、著者の主観でこの問題に関心を持ったきっかけや視点などが語られている。ここで、シュライアーは執筆にあたって100回に及ぶインタビューを行い、40数家族から話を聞いたことを記している。その上で「性同一性障害」を訴える10代の少女が急増している理由を記す。
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10代の少女たちを席巻している現象は違う。その起源は伝統的な性同一性障害ではなく、インターネット上のビデオに端を発している。
インターネット上の動画に端を発している。それは、ネットの達人に触発されたモノマネであり、女友達と誓い合い、手と息を止めて、目をぎゅっと閉じる。彼女たちにとって、トランスであることは、不安の執拗さからの解放なのだ。
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アメリカでも抗議が殺到していた
「性同一性障害」を訴える10代の少女が急増?
ルポライター。1975年岡山県に生まれる。県立金川高等学校を卒業後、上京。立正大学文学部史学科卒業。東京大学情報学環教育部修了。ルポライターとして様々な媒体に寄稿。著書に『コミックばかり読まないで』『これでいいのか岡山』
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