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ロシアのウクライナ侵攻「株価はすでに底打ち」シナリオ。その根拠とは

世界中が底なしの不況に見舞われるリスクシナリオ回避の条件とは

 香川氏が描くメインシナリオはこうだ。ロシアへの経済制裁は西側諸国の経済にもダメージがあるため、FRBの利上げペースが落ちる。また、当事者であるウクライナとロシアでは軍事力の差は明白であり、戦況が長引く可能性は高くない。比較的短期で停戦合意に至り、株式市場は一進一退のもみ合いを続けながらも底値を固め、年後半にかけて回復に向かうという内容だ。この場合、米国市場では業績の回復や拡大も支援材料となりそうだ。  ただし当然、想定より事態が悪化した場合のリスクシナリオもある。紛争が長引き、経済制裁も長期化することで、戦況も経済危機も泥沼化する展開だ。

オイルショック再来の危険性

「原油や天然ガスなどの商品価格が上昇を続け、世界中の国がスタグフレーションのあおりを受けて不況色を濃くするようなことがあれば、株価の回復する余地は限定的となる」  スタグフレーションとは、景気後退と物価上昇が同時進行する現象のことだ。本来の物価上昇であるインフレは、好景気で需要が高まることでモノの値段が上がるが、スタグフレーションは不況とともに訪れる悪いインフレともいわれる。  香川氏によると、1950年代から現在に至るまで、米国では12回の利上げ局面があったが、そのうち11回は好景気に支えられた利上げで株価が上昇した。唯一の例外は1970年代のオイルショック時で、原油価格が急上昇するスタグフレーションに見舞われて株価は低迷したのだ。深刻なスタグフレーションは株価の足を引っ張ることは歴史を見ても明らかだ。  メインシナリオが現実になれば、景気や株価は年内には平常運転に戻ることが期待されるが、リスクシナリオに転べば底がみえにくい不況と株安、そして物価上昇が世界中の暮らしを直撃する事態になりかねない。1日も早い停戦が望まれる。<取材・文/森田悦子> 香川 睦氏 楽天証券経済研究所 チーフグローバルストラテジスト。1989年、日興証券投資信託委託(日興アセットマネジメント)、シティバンク銀行、東海東京調査センターなどでファンドマネージャーや投資調査業務に従事した後、現職。米国駐在経験を生かしたグローバルな視点に定評
フリーランス記者/ファイナンシャルプランナー。地方新聞記者、編集プロダクションを経て独立。主な執筆分野は資産運用、年金、社会保障、金融経済、ビジネスなど。新聞、雑誌、ウェブメディアなどで取材記事やインタビュー、コラム、ルポルタージュを寄稿
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