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ゼレンスキー大統領の“演説時の表情”から読み取れる真意は? AI分析してみた

怒りや悲しみとともに、日本への深い共感の念も

①「戦後の復興に懸念を抱いている」について。 「ウクライナの原子炉が危険な状態にあり、工業施設の多くが被害を受け、環境に対するリスクになっている」と発言しているとき、大統領の表情には、悲しみ、怒りの順で感情が強く生じています。悲しみは、大切な人・モノを失うときや助けを求めているときに生じる感情です。怒りは、目的を阻む障害を取り除こうとする感情です。大統領のメッセージを感情と共に読み解くと「原子炉や工業施設の被害が止まらないことに憤りを抱き、引き続き大切な人・モノを失う可能性があることから、戦後の復興の困難さを強く懸念している」と推測します。 ②「化学兵器・核兵器による攻撃の可能性を不安視しており、世界中で問題を共有したい」について。 「サリンなどの化学兵器を使った攻撃をロシアが準備している。また、核兵器が使用された場合、世界はどうなってしまうのか。将来への自信、確信は誰にも、どこにもないはずです」と発言しているとき、大統領の表情には、怒り、悲しみの順で感情が強く生じています。メッセージを感情と共に読み解くと「化学兵器や核兵器をちらつかせるロシアに怒りを抱くと共に、非人道的な兵器の使用が世界の均衡のあり方を変えてしまう現実的な事態を自分事として考えてほしい」と推測します。 ③「文化を通じて、日本とこれからも価値観を共有したい」について。 「日本の昔話をウクライナ語でオーディオブックにしました」という件の前後、大統領の表情には、幸福感情及び眉が引き上げられる表情が生じています。幸福は、一つに、関係性を維持したいときに生じる感情です。眉が引き上げられる表情は会話のシグナルといい、自己が話すメッセージに注目してもらいたいときに生じる動きです。以上より、「日本と文化を通じた価値観の共有を深めていきたい」というメッセージと推測します。

プーチン大統領の最近の表情からは「核に対する何らかの意思」も……?

 その他、ゼレンスキー大統領の表情からは、嫌悪や恐怖などが垣間見られ、様々な感情が渦巻く中、自国の現状や支援に対する感謝、そしてさらなる支援の必要性を懸命に訴えようとしている様子が伺えました。  最後に、私の懸念事項を一つ。かつて核について言及するとき、プーチン大統領は嫌悪感情を浮かべていました。  嫌悪は、不快感を示す感情です。また、あるイベントでスクリーンに原爆シーンが映し出されたとき、プーチン大統領は十字を切っていました。しかし、最近たまたま目にしたニュース映像において、核に関する発言をするプーチン大統領の表情に嫌悪は生じていませんでした。たまたま生じていなかった、たまたま目にしなかったであろうことを願っています。  私たち一人一人に何が出来るでしょうか。各人が、考え、具体的な行動につなげられればと思います。 <文/清水建二>
株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役、防衛省研修講師、特定非営利活動法人日本交渉協会特別顧問。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。著書に『裏切り者は顔に出る-上司、顧客、家族のホンネは「表情」から読み解ける』中央公論新社、『ビジネスに効く 表情のつくり方』イースト・プレス、『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』フォレスト出版、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』飛鳥新社などがある。
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