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ゼレンスキー大統領の“演説時の表情”から読み取れる真意は? AI分析してみた

ゼレンスキー大統領の演説時の表情から読み取れるものは?

©Oleh Dubyna | Dreamstime.com

ウクライナ・ゼレンスキー大統領(写真は2020年9月1日の街頭演説時のもの)©Oleh Dubyna | Dreamstime.com

 こんにちは。微表情研究家の清水建二です。3月24日に日本の国会にてゼレンスキー大統領のオンライン演説が行われました。演説後、様々な識者や専門家によって批評・分析がなされ、概ね「日本が体験した(している)難局に関わる象徴的なワードが散りばめられ、ウクライナに対する共感が自然に呼び起こされるような演説であった」との評価がなされているように思います。  加えて、事前に予想・懸念されていた、日本に対する直接的な(ドイツでの演説で行われたような)批判や、直接的な軍事支援要請(アメリカでの演説で行われたような)はなく、日本人の気質や立場を汲んだ間接的で穏健な演説であったように思います。  目下、演説における言語上のレトリックに注目が集まっていますが、ゼレンスキー大統領の非言語は何を語っていたでしょうか。本稿では、ゼレンスキー大統領の表情に注目して、メッセージに込められた感情を分析したいと思います。分析対象の動画はこちらです。 <【ノーカット】ゼレンスキー大統領 国会で演説>(2022年3月24日アクセス)YouTube

分析には23種類の表情筋を認識可能なAIを使用

 こちらの約12分間の演説を、感情認識AIにかけ分析しました。分析に使用した感情認識AIは、23種類の表情筋の動きから、10種類の感情(幸福・軽蔑・嫌悪・怒り・悲しみ・恐怖・驚き・混乱・センチメンタル・中立)及び2種類の特殊指標(肯定的表情・否定的表情/表情の豊かさ)を推測することが出来るソフトウェアです。  表情の動きから感情の閾値が50(閾値は0~100までの値をとり、30を超えれば、その感情がある可能性が高いとされています。しかし、ここではメッセージに込められた強い感情を分析したいため50としました)を超えた部分のメッセージに焦点を当てます。すると、メッセージにどのような感情が重みづけられているかを考察することが出来ます(私たちは自身にとって重要だと感じる出来事に感情を抱きます。つまり、発信者のメッセージを感情とセットで受けとることで、メッセージの中で発信者が相対的に重視していることがわかるのです)。  AI分析及び考察の結果、ゼレンスキー大統領は、 ①戦後の復興に懸念を抱いている ②化学兵器・核兵器による攻撃の可能性を不安視しており、世界中で問題を共有したい ③文化を通じて、日本とこれからも価値観を共有したい  というメッセージを演説に強く込めていたと推測します。以降で、それぞれを説明します。
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怒りや悲しみとともに、日本への深い共感の念も
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株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役、防衛省研修講師、特定非営利活動法人日本交渉協会特別顧問。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。著書に『裏切り者は顔に出る-上司、顧客、家族のホンネは「表情」から読み解ける』中央公論新社、『ビジネスに効く 表情のつくり方』イースト・プレス、『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』フォレスト出版、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』飛鳥新社などがある。

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