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パワハラ、薄給激務…労働問題の相次ぐミニシアターで社会派映画が上映される矛盾

配給会社に強行されたら上映を止められない

ミニシアターここで、問題が起こったミニシアターに毅然とした態度を示している映画関係者も紹介したい。深田晃司さんは2020年10月、監督作『本気のしるし 劇場版』について、アップリンク系列劇場での上映を取り下げている。 「アップリンクで労働問題が起き、弁護士を介して話し合いが続いているという話は聞いていました。でも、浅井取締役が元従業員の方々に提訴されたと知り、被害者が複数名いたうえ、浅井取締役も事実を認めていたので、私から配給会社に上映取り下げの提案をしました。そこから製作会社に話をつけてもらい、実際に取り下げる運びとなりました。興行的には打撃を受けましたけれども」(深田さん) 今年に入って3月には、榊英雄監督の映画『蜜月』が公開中止になる事件も起きた。榊氏が複数の女性俳優に対し、性行為を強要していたとの告発を受けてである。しかし、榊氏が監督した別作品『ハザードランプ』については製作委員会から当初、予定通り4月15日の公開を目指しているとの発表がなされた。 その後、被害者感情への配慮が足りないとして、多くの人が製作委員会を非難し、3月31日、公開中止の決定が下された。映画関係者や劇場の問題が起きたとき、上映を強行したがる作品があるのはどうしてなのだろう。 「商業映画の場合、監督やキャストに上映を取り下げる決定権はまずありません。日本では基本的に、監督に著作権はないので。『本気のしるし 劇場版』でも僕は配給会社に気持ちを伝えただけで、上映を強行されていたら止めることはできなかった。 製作委員会の性格もありますが、『ハザードランプ』のように、関係者に問題があってもなかなか延期に踏み切れないのは、損失が大きくなってしまうからだと思います。商業映画は公開日に話題のピークを迎えられるよう、配給宣伝費をかけて宣伝や取材を組んでいく。そのスケジュールがずれてしまうと、制作費の回収が難しくなってしまう。少しでも回収しようとすれば、予定通り上映するしかない」(深田さん)

業界のゆがんだ構造を押し切るための“呪いの言葉”

『蜜月』では脚本家の港岳彦さんが自身のブログにて監督を強く批判し、被害者たちに寄り添う姿勢を打ち出した。作り手側のこうしたアクションも、上映中止の判断に影響してくるという。 「プロデューサーって結局、損失を抑えなければならない立場だから、自分から『上映中止にします』とは言いにくいとは思うんです。『蜜月』の公開中止では、作り手が問題に対してアクションをしたのは大きかったと思います。 脚本家は公開がされればインセンティブが入るわけですから、港さんはその機会を手放したともいえる。それでも、作り手にしか言えない内容をしっかり発信されたということですね」(深田さん) 深田さんは自身も含めて日本で映画制作を行える人々について、「恵まれている」という表現をする。実家の支援を受けられる人、現場のハラスメントを乗り越えられた人、業界でコネクションが築けた人…。一部の恵まれた人しか映画の中枢に関われない世界では、それ以外の人々への扱いがどんどん雑になっていく。 筆者が劇場勤務時代に散々聞かされた、「あなたには映画愛が足りない」「奉仕の心を持て」という言葉は、業界のゆがんだ構造を押し切ってしまうための呪いだったといえるだろう。榊氏が某メディアの取材で口にした「作品に罪はない」というセリフも、議論を封殺したい意図が含まれているように聞こえる。
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浮き彫りになる「恵まれた者の特権意識」
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