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実写ゲームが「メインストリームになれない」4つの理由。es、街…名作は数あれど

実写ゲームが制作されづらい理由

 こうした名作があったにもかかわらず、その後、どうして実写ゲームはタイトル数に乏しく、ヒット作もほとんど現れなかったのか? そこには4つの要因が考えられます。 1:開発費の高さ  多くのキャストやスタッフを動員して撮影する実写ゲームは手間がかかり、開発費の高さがハードルとなります。『春ゆきてレトロチカ』もCGで作ったアドベンチャーと比べて、かなり開発費がかかったという話が聞こえてきます。CGが一定水準以上のリアルさを持つようになるにつれ、あえて実写映像を使うのはかなりの賭け。表現手段として実写を使う意味やメリットも求められてきます。 2:容量の問題  実写ゲームに立ちはだかってきたのはデータ容量の壁です。90年代は実写映像を長時間取り込むことは難しく、静止画や細切れのムービーでシーンをつないでいくのがやっと。通常のアドベンチャーゲームと比べて、プレイボリュームの少なさも目立ちました。ただ、これに関してはハードスペックが上がっていけば、いずれ解消に向かうでしょう。

プレイヤーにも制作側にも“慣れ”が必要

3:実写ゲーム特有の違和感  実写ゲームに違和感を抱くという人もいるのではないでしょうか。テレビドラマや映画に比べて、予算の都合で映像の作りがチープというのも理由のひとつですが、もうひとつは受容のされ方。ドラマや映画は止まることなく流れてくる受け身のメディア。一方、アドベンチャーに代表されるストーリー型の実写ゲームは、プレイヤーが介入することで物語進行が途切れ途切れとなり、受動と能動が交互にやってきます。遊ぶ側の慣れも必要でしょう。また、実写ゲームの映像部分はドラマのノウハウで制作されることが多いため、選択肢で分岐するアドベンチャーゲームの文法に必ずしもマッチしない可能性があります。 4:ビジネス展開の難しさ  ゲームメーカーが積極的に実写ゲームに進出しないのは、ビジネス展開の難しさもあるかもしれません。オリジナルキャラクターなら、ゲームがヒットすれば、グッズや派生作といったコンテンツの育成も容易です。しかし、実写ゲームは肖像権、契約の問題も絡んでそれらが難しく、うまみが少ないといえます。  これらの壁を乗り越えて登場した『春ゆきてレトロチカ』は、どこまでゲームシーンに爪痕を残せるのか? そして実写ゲームは一ジャンルとして定着していくのか? アドベンチャー好き、実写ゲーム好きの私としては大いに期待します。 <文/卯月 鮎>
ゲーム雑誌・アニメ雑誌の編集を経て独立。ゲーム紹介やコラム、書評を中心にフリーで活動している。雑誌連載をまとめた著作『はじめてのファミコン~なつかしゲーム子ども実験室~』(マイクロマガジン社)はゲーム実況の先駆けという声も
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