藤田和日郎著（小学館） 　皆さんは、人形劇を観たことはありますか？　僕はNHKの『ざわざわ森のがんこちゃん』くらいしか思い浮かびません。生で人形劇を見ることのできる機会も少なくなっている気がします。 『からくりサーカス』は、『少年サンデー』に連載されていたSF作品です。人間サイズの武装人形を操ることのできる人形遣いたちと、人間を殺そうとする「オートマタ」という意思を持つ人形たちの戦い、そして世界中に蔓延する「他人を笑わせない限り、永遠の苦痛が続く奇病」とが複雑に絡み合い、重厚かつ壮大な冒険活劇を紡ぎだしています。 　この作品は、非常に巧みな構成がされています。第一幕は主人公の才賀勝がわけもわからず人形遣いに殺されかけるところから始まりますが、徐々に「世界中で人を殺しまわるオートマタ」たちとの戦争と関わらざるを得なくなっていきます。 　作中の設定も非常に長期にわたってなされており、足掛け200年以上にもわたる因縁の始まり、衝突、そして終焉までを描いた、とても一言では説明しきれない複雑なストーリーが魅力となっています。 　また、非常に感動的なシーンが多いのも特徴です。僕は、いわゆる「感動シーン」ではまったく泣くことのないタイプなのですが、その僕ですら、終盤の展開では何度も目頭を押さえる羽目になりました。 　全43巻と多少長くはありますが、一度手に取れば時間を忘れてあっという間に没頭してしまう本作。熱い展開と泣けるストーリーに目がないのであれば、絶対に手に取るべき作品です。