ニュース

ウクライナの激戦地ハルキウで見た「無差別攻撃で同胞も殺す」プーチンの戦争

防弾チョッキをつけ、危険地帯で活動するボランティアの人々

ハルキウ市中心部にある、ボランティア団体の拠点。数十人のボランティアが常駐し、支援物資を避難者や危険地帯の住民へ配布している

ハルキウ市中心部にある、ボランティア団体の拠点。数十人のボランティアが常駐し、支援物資を避難者や危険地帯の住民へ配布している

 ロシア軍の圧倒的な悪意と破壊と対象的だったのが、身の危険を冒してまでも助け合おうとするウクライナの人々の姿だ。「レスキュー・ナウ」や「エバキュエーション・ハルキウ」といった団体のボランティアたちは、文字通り命がけの支援活動を行っている。  中心部から北に約10kmのあたりからは、ハルキウの中でもより危険な地域となる。この一帯では、頻繁にロシア軍のロケット弾や砲弾が飛んでくるのだ。車でこの地域を動き回ったが、目にする家々は半壊か全壊のものが多い。  そのような危険地帯にも、家族が病気で動けないなどさまざまな事情から避難できない住民たちがいる。こうした人々のため、「レスキュー・ナウ」や「エバキュエーション・ハルキウ」のボランティアたちは毎日、食料や水、医薬品を危険地帯の各家庭へ配っているのだ。レスキュー・ナウの広報担当は「日本からの募金も活動に役立てられており、日本の皆様に感謝しています」という。  実際、危険地帯での活動はリスクを伴うものだ。ボランティアたちの車は銃撃や爆発の破片による傷痕だらけ。支援物資を配布するレスキュー・ナウのボランティアたちも、防弾チョッキを着込んでいる。
アルチョムさん(右)とデニスさん(左)

アルチョムさん(右)とデニスさん(左)

 その中の一人、アルチョムさんは「支援物資を配っている間に、すぐ近くで爆発があったこともありました。でも、多くの人々が水や食料を必要としているのです」という。アルチョムさんと相棒のデニスさんは1日で30~40家庭に支援物資を配るのだそうだ。

多くのロシア人もウクライナとの戦争を悲しんでいる

ロシアへの複雑な思いを語るイヴァン氏(本人のセキュリティーのためモザイク処理)

ロシアへの複雑な思いを語るイヴァン氏(本人のセキュリティのためモザイク処理)

 戦争による、ロシアへの怒りとウクライナ人同士の連帯の高まり。それは、もともとは親ロシア感情を持つ人々も多かったウクライナの社会にどのような変化をもたらすのだろうか。取材の中で、イヴァンは「僕にとって、ロシアの文化や社会は、自分のアイデンティティの一部なんだ。それを否定するような戦争が憎い」と打ち明けた。 「戦争前はロシアで暮らしていて、音楽活動をやっていた。現地で結婚もした。妻はまだロシアにいる。ロシア人である彼女を戦争の最中にウクライナに連れてくることは難しいし、ロシアに残しているのも心配だ。彼女は反戦デモに参加して逮捕された。幸い、すぐに釈放されたけど、ロシアでの締めつけはより厳しくなっている」  イヴァンは「僕と同じように、多くのロシア人もウクライナとの戦争を悲しんでいる」と言う。プーチン大統領は「ロシア人とウクライナ人は、もともと同一民族」と主張するが、戦争によって分断を生んだ同大統領の責任は非常に大きい。 文・写真/志葉 玲
1
2
難民鎖国ニッポン

国連からも改善勧告を受けた、 非人道的な日本の難民政策を告発

おすすめ記事