団塊の世代が作ってきた「日本の政治の問題点」とは/上念司
歯切れの悪い与党に、与党の妨害ばかりする野党。国会審議などを見ても「なぜ、日本の政治家は建設的な提案ができないのか?」と憤りを抱く人も多いのでは。その原因について「団塊の世代がカギを握っている」と語るのは、経済評論家として活躍する上念司氏だ。現在日本を動かす団塊の世代や、彼らの高齢化が今後の政治に与える影響などについて、上念氏が解説する。
(以下は、上念司著『あなたの給料が上がらない不都合な理由』の一部を編集したものです)
ワイドショー民の中核を成す、団塊の世代と呼ばれる人々がいます。団塊の世代とは、1947年から1949年に生まれた戦後のベビーブーマー世代で、総人口の約5%を占める巨大な集団です。
2022年現在、彼らの年齢は73歳から75歳となり、あと10年もしないうちに全員が80歳超えとなります。この世代は戦後教育の影響で左翼的な思想を持つ人の割合が高く、2015年の安保法制騒動の時もデモ隊の主力だと言われます。2021年の衆院選比例区における年代別投票先を見るとその傾向は一目瞭然です。
70代以上の支持者を多く持つ立憲民主党や共産党はモンスタークレーマーのように国会で政府の揚げ足取りをするだけで、何一つ建設的な提案をせず、国会審議を妨害しまくっているというイメージをお持ちの方は多いですよね。
実際には国会で審議される法案の8割は粛々と話し合われて順次可決されていくのですが、彼らが「対決法案」と位置付けた法案においては、ド派手なクレーマー的なパフォーマンスが展開されるわけです。8割はスルーしているくせに、2割で妨害して仕事をしたフリをする。本当に最低な連中ですが、そんな無責任野党に力を与えているのがまさにこの団塊の世代です。
ところが寄る年波には勝てません。会社はとっくに定年退職になったと思いますが、政治活動からもそろそろ引退していただく時期が来たようです。さすがに80歳を過ぎたら投票に行くのも大変ですよね。じわじわと無責任野党の最大の応援団が衰退していきます。
無責任なクレームで国会を荒らしまわる野党がいなくなれば、国会での議論も効率よく進むのではないでしょうか。ただ、問題は自民党の受け皿になる真の責任野党が育つかどうかという点です。
机上の空論ばかり言っている無責任野党が相手なら、自民党は好き勝手ができますが、下手すると自分たちが下野するかもしれないとなれば、また緊張感が変わります。日本維新の会や国民民主党は現実路線を打ち出して、2021年の衆院選では大躍進しました。果たしてこの勢いが続くのか? 少なくとも、無責任野党が衰退することである程度は党勢を拡大できそうですよね。これは政治にとって大きな転換点になるかもしれません。
例えば、国民民主党は2022年度予算案に賛成しました。エネルギー価格高騰で国民が非常に困っているという状況を踏まえ、ガソリン税の暫定税率を一時的に凍結するトリガー条項の発動に的を絞ったからです。
玉木雄一郎代表は、自身のツイッターで「国民民主党は、選挙公約で掲げたトリガー条項の凍結解除によるガソリン値下げを実現するため、令和4年度予算案に賛成しました」と述べています。そして、この決断を支持する声はSNS上に溢れました。何でも反対の民主党の頃には考えられなかったことが起きています。
無責任野党が退場して、与党と責任野党による真っ向勝負となれば、日本の政治は変わるかもしれません。遅々として進まないデジタル化、規制緩和、そして減税についても何かが動き始めるかもしれない。そういう期待が持てるようになったことは非常に喜ばしいことです。人口動態から考えて、ますます無責任野党は衰退していくでしょう。この流れは止めることはできないと思います。
無責任な野党に力を与えている団塊の世代
与党と責任野党で日本の政治は変わる?
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1969年、東京都生まれ。経済評論家。中央大学法学部法律学科卒業。在学中は創立1901年の弁論部・辞達学会に所属。日本長期信用銀行、臨海セミナーを経て独立。2007年、経済評論家・勝間和代氏と株式会社「監査と分析」を設立。取締役・共同事業パートナーに就任(現在は代表取締役)。2010年、米国イェール大学経済学部の浜田宏一名誉教授に師事し、薫陶を受ける。リフレ派の論客として、著書多数。テレビ、ラジオなどで活躍中
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