仕事

六本木ホストの経験も活かして通販社長に「過去の苦労が血肉になっている」

「一発当てる」ためにさまざまなビジネスに挑戦

 ただ、お酒を飲むことと話すことしかできない吉田さんにとって、新しい職場は鍛錬の場だった。 「パワーポイント、エクセルなどのPC操作や社長のスケジュール管理、車の運転などをやっていました。社長秘書の次は新しく不動産事業の会社を設立するために、創業メンバーとして抜擢されたので、夢だった社長になるチャンスだと思い、必死に頑張っていたんです」  だが、不動産事業の会社は諸事情で設立が叶わず、吉田さんは次のビジネスに挑戦することになる。  当時、全盛だったiモードでアパレルを販売するECサイトを立ち上げる会社の役員として名を連ねた。 「その会社もアパレルだけやっていた手前、鳴かず飛ばずで事業がうまくいかないことが多かった。そこで今度は、テレビショッピングで物を売る事業をやることになったんです。そのタイミングで、役員から社長として事業の切り盛りを任せてもらうことになり、やれることは全て自分自身でこなしましたね。  テレビショッピングはアパレルのほかにもかばんやサプリメントなどを、知人の芸能事務所に所属するタレントに出演してもらって販売促進するビジネスモデルを構築し、事業を運営していました。台本を書いたり、商品のバイイングをしたり、芸能事務所と折衝したり……。売り上げを作るのに必死でした」

過去の苦労した経験が血となり肉となって、今に生きている

吉田忠史 その後、社長の任期終了に伴い、退職した吉田さんはフリーランスとして活動を始める。  Webサービスを使ったを使った個人店向けの集客支援やECサイトの構築、テレビショッピングのコンサルなど、かつての経験で得たスキルをフルに活用し、気づけば自然と稼いでいけるようになっていたのだ。  売り上げが順調に伸び、いよいよ法人化を検討した頃に出会ったのが現在、代表取締役を務めるパレンテの前社長・山中さんだったそう。 「うちのコンタクトレンズショップを手伝ってほしい」という一言が、吉田さんにとってコンタクトレンズ業界へ踏み入れるきっかけになったのだ。  当時、吉田さんは、日中の仕事に加え、24時間のテレビショッピングでの夜のOAで昼と夜で別の仕事が入っていたものの、お店の営業時間内なら働けることがわかり、ダブルワークとして店長業務を行うようになった。  程なくして、コンタクトレンズをネットで売るという事業を本格化させる機運が高まり、前社長の山中さんから何度も社長のオファーを受けたという。 「最初、3回くらいオファーは断ったんですよ。でも、裁量を持って事業をやらせてもらえるならやってもいいかなと思ったんです。そこから社長になる決心をし、今のレンズアップルを立ち上げるに至りました。これまでいろんな事業に関わり、貧乏な時期も経験しました。ときには、従業員の給与を払うために消費者金融からお金を借りたこともあります。社長として、歌舞伎町や六本木へ飲みに行けば、見栄を張らなければならない場面もありました。  こうした過去のさまざまな経験が、今振り返れば血となり肉になっていると感じています。自分自身、執着心が強いんですよ。何かを求められれば、それに応えようとコミットする性格なので、何事も目標に向かって全力投球してきたのが活かされているのかもしれません」  吉田さんは2011年にパレンテの代表取締役に就任し、コンタクトレンズECサイト「レンズアップル」を軌道に乗せることに成功。今では国内最大級の規模にまで成長させた。
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コロナ前後でのトレンドの変遷
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1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている

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