「絶望犯罪」が増える冷たい世の中で、弱者が生き残る術/だめ連
ロシアによるウクライナ侵攻など、国家間の戦争が重い問題として浮上している。一方で、日常生活の世界でも大阪の心療内科への放火や京王線の「ジョーカー」事件など、周囲を巻き込んで図る「拡大自殺」とでもいうべき事件も発生する昨今。世の中、どうしてあまりにも暗くしんどいのか、どう打開できるのか? 90年代以降、社会でよしとされる価値から距離を置く生き方を模索してきた「だめ連」の2人が、トークの中から考える。
ぺぺ:ちょっと前の「SPA!」の特集が、「会社がツライ」。内容はグチのオンパレードなんだけど、とにかく辛すぎる、と。産業カウンセラーが「ここは我慢してください」とかいろいろと言っているわけだけど、もうもろもろがリミットに来ている。ただ首を括るか、なんかやらかすか、ということになっている。
神長:自殺する人もいれば、「拡大自殺」で周りを巻き込む事件も起きている。行き詰まって、生活が立ち行かなくなるのが、犯罪の背景にはある。「絶望犯罪」とでもいうべき犯罪。仕事もうまくいかない、つけない、展望がなくなる。借金があることだってある。やっぱり生活保護が重要。生活保護を取りやすくして、なおかつバッシングされないようにする必要がある。競争からこぼれ落ちる人は絶対にいるから。
ぺぺ:新自由主義的な経済システムの崩壊というのはあるはずだけど、決定的なのは、大阪の心療内科に放火した事件、あの犯人が生活保護を断られていた。生活保護を断られて犯行に及ぶ、と言うのは決定的な事件では。
神長:犯罪ってだいたい生活に行き詰まって起こる。そして、希望が持てない社会ということも大きい。
ーー犯罪の発生件数自体は減っていますが、電車の中とかで目立つ、人の耳目を引くような犯罪をおこなう。そこに横たわっているものはなんでしょうか。
ぺぺ:それは格差や貧困が拡大して「社会の底が抜けてきている」ということのあらわれでは。もう持たない。
神長:社会の底はずっと抜け続けているけれども、その流れが加速している。
ぺぺ:格差との関連で言えば、上の方の階層はのほほんとやってるようにも見えて、「このぐらいやらないとわからないだろ、わからせてやる」という流れが社会の下層から出てきているのでは。「わからせる」という言葉にどういう意味を持たせるか、というのはあるけれども、たとえば、京王線のジョーカーの事件について今年2月に行われたトークイベントの参加者が「共感はするけど賛同はしない」という話をしていた。
神長:小田急線でも事件があったが、あれは「フェミサイド」とも言われていて、実際、女性に対する攻撃。犯人には「イケてる女の人を見るとムカつく」というようなのが動機にあった。勝ち組に対するルサンチマンというか、攻撃する側からすると女性がイケていて、楽しそうに見えるんだろう。
ぺぺ:それはそれでわからなくもない。
神長:いっぽうで、自分はイケてなくてすごくみじめ、生きていても意味がない、しょうがない、という感覚を持ってしまう。やはり、資本主義が抱える問題は大きい。資本主義のシステムに適応してカネを持っていないといけない、そうでない人生はみじめなんだ、ダメ人間なんだ、と思い込まされているというのはある。「生産性が高いかどうか」とか「経済的な意味で役立っているか」など、資本主義のものさしで価値基準を考えるようになってきてしまっている。
「絶望犯罪」が生まれる背景とは
「カネを持ってない人生はみじめ」という思い込み
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