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「絶望犯罪」が増える冷たい世の中で、弱者が生き残る術/だめ連

「友達を作る」はムリゲーなのか

ーー一方で、資本主義から降りるのが怖い、降りたところで自分がどうなるのかわからないという人もとても多いとは思います。 神長:たしかに、「イケてる人になれ」などという「だめプレッシャー」も大きいし、おれも老後どうなるかなどはわからない。けれども、大して収入はないけど、楽しく面白いことして生きている、という友達が一人でもいればちがう。助け合うこともできるし。 ぺぺ:同じく「SPA!」で見たんだけど、「40〜50代で友達がいない人が5割」というのがあって。これはなにが友達というハードルが上がってる感じのインタビューだったから、本当にそうかな、と思って。 神長:そういう人もいると思う。 ーー本当かもしれませんね。 ぺぺ:おれの親父も言ってた。「大学のうちに友達を作っておけよ、会社では友達はできないから」って。 神長:おれも言われてた。友達がいない人は多いと思うよ。 ーーサラリーマンになるということは、「人間関係を友情で作るということじゃない」ということを受け入れることだ、と思っている人は多いでしょうから。 ぺぺ:サラリーマンという設定がそう。 神長:時間も機会もないし、友達を作る、というのはむずかしい。 ーー資本主義社会から降りる、友達を増やす、といいますが、展望はありますか。 神長:(ロシアによるウクライナへの侵攻)で動乱期、なんだけど、資本主義の本性剥き出しとも崩壊とでもいうべき状況もずっと継続していて、生存的にも生きる内容的にもつらくなっている。資本主義から距離をとって別の生き方を模索していくしかない。現実的な話として、そういう人はすでにいっぱいいる。そんなに稼がなくてもいいから、精神的に楽しく豊かになって、それで世の中も少しずつよくなって、という感じでやっていく。そのあたりが展望では。勝ち組でも負け組でもなく、抜け組。そういう人は本当に色々いる。インディーズのミュージシャンなどで、バンドをやって、ある程度資本主義社会から降りてやってるんだけど、日本中に同じような仲間のミュージシャンとかがいてつながってたり。自給自足的に畑なんかを始めてる人も今は多いじゃないですか。中国では「寝そべり族」なんて人たちもでてきている。 ぺぺ:二、三人の鍋会でもいいから、言いたいことを言える環境がある、というのが大事。でも、そういったものがかなりなくなっているんじゃないか。「デモなんかやっても意味ないんだよ」ってネットで言う人とかって、自分が職場で誰の悪口も言えないと言うか、とほうもない無力感の中で生きていて、それがデモなんかやっても意味がないだろ、という話になるのでは。「おまえは直接自分を抑圧している人間の文句も言えないだろう、ならそんなことしか言えないだろう」とも思うけれども。そんな人間の在り方が支配的になっているというか。でもそれは奴隷の発想でしょう。2〜3日、奴隷根性という問題について考えている。動乱期に入ったから、動乱期の人の本を読むのが現実的かなということで、昨日も魯迅入門を読みながら、「奴隷根性の革命がなければ一切の革命がないかな」と。危機の時代から動乱の時代に入ったから、諸々一新せねばならん、と。

耳を傾けるべき「奴隷側の声」

神長:どう一新する? ぺぺ:それは手探りで考えていくしかない。どう変わるかは誰にもわからない。だから、「どうしたいか」を考える。想像力の問題。最悪、第三次世界大戦が、とかメディアで普通に言っている状況のなかで。現実的な話として大事なのは、社会的な劣位に置かれているとされる人から学ぶこと。ホームレスだけどなんだか明るい、とか。 神長:ある種の開き直りとか重要になってくるけど、どう学ぶ? ぺぺ:学ぶというのであればどんな人からでも学ぶべき。世の中、「偉大な経営者に学ぶ」「イケてる起業家のようになりたい」とかそういうのとかばかりだけど、そういうのではなくて。死ぬのがいいのかどうなのか、となった時に、でも世の中にはいろんな人がいるんだな、と考えられる感覚。そういった学び方のほうがリアル。 神長:言いたいことはなんでも言うし、やりたいことはなんでもやるというか。カネはなくても心を失わなければみじめじゃない、とか。そう言うように開き直れれば、言いたいこともやりたいこともできる。 ぺぺ:高円寺駅の北口にホームレスの人がいて、「飢えることはない」って言っていた。これは本当のことを言っている。まだ餓死するほどの状況ではないから、精神の瓦解の方が差し当たりリアルな問題。 神長:餓死する人も出ている。 ぺぺ:けれども、餓死も精神の崩壊とつながっている。たとえば、せっぱ詰まったときに二千円貸してくれる友だちがいればいい。それで米が買えるわけだから。 神長:精神の瓦解は重要な問題だ。希望が持てない。希望を持つにはまずは楽しい時間をすごすことが重要なんじゃないか。友達とカネをかけずに気取らずに遊ぶのがいい。ハイキングでもホームパーティーでも。自分の悩みとか今の世の中の問題点を語りあったりするのも重要だ。そういうところから少しずつ希望や展望が芽生えてくると思う。 ぺぺ:これは特集をしてほしいとも思ってるけれど、「コミュ力」「コミュニケーションスキル」などという問題設定は根本的に間違っているのでは。「コミュニケーションスキル」って、ビジネスの文脈で浮上してくるものだけども、コミュニケーションは、もともとそんなものじゃないだろうと思う。
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内向型人間は“出会いの質”が高い
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