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「絶望犯罪」が増える冷たい世の中で、弱者が生き残る術/だめ連

資本主義がもたらした“冷たい社会”

ぺぺ:そして、最近では資本主義に適応しているはずの平均的な人たちでも、「会社がツライ」になっている。 神長:資本主義社会で普通にやっていく、ということ自体のハードルが非常に高くなっている。いろんなことを我慢し、感情も良心も押し殺して労働しなくてはならない。 ぺぺ:社会がなんらかの限界に突き当たっていて、そのあらわれとして犯罪がある。 神長:資本主義の当然の帰結というか、非常に冷たい社会になっている。でもそれではだれも幸せにならない。自分だけよかれというエゴイズムの問題が出てきている。自分だけ得しようとか、競争のなかで相手を蹴落として生きていこうとすると、結局、回り回って自分もみんなも生きにくくなる。このような状況のなかで煮詰まっているところから、何人かが犯罪に走る、と。 ぺぺ:犯罪は特殊な人がやっているわけではないと認識した方がいい。社会の多くの人が、薄々そう思っているのではないか。 神長:小田急線の事件とかで、あれは「フェミサイド(性別を理由に女性を標的とした殺人)」だということで女の人が声をあげたけれど、それに対してバッシングが多くされた。でも、加害者とバッシングをする人間は同じ思考パターンなんじゃないのか。

ネット上に散見する“良心の欠如”

ぺぺ:おまえたちも同じだよ、というのがはっきりとにじみ出ている。 神長:ネットでも、声を上げた女性たちへのつっこみを入れる書き込みで「犯人と思考回路が同じ」という内容のものを見たことがある。同じなのはそちらでは、と思う。で、なぜ女性たちをバッシングするのか気になった人がいて取材をしたが、答えてくれる人があまりいなかった。結局、1人探し出したけれども、内容は、(該当記事あり)「そんな抗議をしたって我々なんて何をどうすることもできないだろうし、女性だから被害にあったと言っても何を言ってるのかなと、だったら犯人に言うべきことであってデモなんかするのはお門違いだろう」とかいうもの。こういう「批判」はほかのデモなどに対してもあって、「デモなんかやったって意味がない」など、そういうことをいう人は多い。けれども、こういうのは、端的に言って良心があんまりない人ではないか。さらに、女性の問題だと「女は黙っていろ」というような差別的な内容も出てくる。資本主義による人心の荒廃が、小学校の先生がいうような、あまりにもベーシックな話をしないとならない段階に来ている。 ぺぺ:これは新自由主義の時代の一つの帰結。新自由主義はもう終わったのかもしれないけど、人間の心はすぐには変わらない。それを引きずったまま、新しい状況に入っていく。 神長:資本主義社会は依然として続いている。 ぺぺ:けれど、決定的な危機には陥っている。 神長:問題は、だからそこでどうするか。資本主義に見切りをつけ、競争社会に巻き込まれないように「降りる」のがいいと思う。資本主義はやっぱり冷たい。こぼれ落ちる人もどんどん増えていくし、こぼれ落ちないためには大変な苦しみというか、自分の精神までも搾取される。生活はできても自分の心を売り渡さないといけない、それが激しくなっている。もう降りるしかない、他の生き方を模索するしかないでしょう。実際にそうしている人もいっぱいいる。資本主義的な価値観から距離をとって、もうちょっと違ういい感じのものを作って生きていこう、みたいな人がいっぱいいるし、増えてきている。
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「友達を作る」はムリゲーなのか
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