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磯村勇斗、俳優として「芽生えた違和感を放置しない」

 第75回カンヌ国際映画祭にて「ある視点」部門に正式出品され、カメラドール特別表彰に輝いた衝撃作『PLAN 75』が公開中です。75歳以上の高齢者に自らの生死を選べる権利を保障・支援する制度“プラン75”の施行された社会を舞台にした本作で、“プラン75”の申請窓口で働く若き市役所職員を、『今日から俺は!!劇場版』『ヤクザと家族 The Family』『前科者』と、作品ごとに全く違った顔を見せる磯村勇斗さんが演じています。
磯村勇斗

磯村勇斗さん

 本作を「社会がいい方向に動いていけるように考えるきっかけ」になり得ると話す磯村さんに、本作から感じたことや、派生して昨今の社会の動き、SNSの言葉の危険性などについて聞きました。  

最初は都市伝説の一種なのかと

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(C) 2022『PLAN 75』製作委員会/Urban Factory / Fusee

――鑑賞後、SFでもなく決して絵空事とは言えないリアルな内容に、ズドンと来ました。 磯村勇斗(以下、磯村):そうですよね。僕はもともと都市伝説が好きなんです。そこには人口増加に関する話も多くて。これ以上増えると地球がもたないから、人類削減計画が進んでいるとか。ちょうどそうしたものを読んだりしているときに、このお話しを聞いたので、最初はそういう話の一環かなと思ったんです。 ――SFかなと思いますよね。 磯村:はい。SF的な目で見ると、こういう設定(自らの生死を選択するという名目のもとに高齢者を排除する世界)も出てくるのかなと一瞬思ってしまうんですけれど、この作品の中の“プラン75”という制度を見たときに、自分自身の人生を決める最終的な意思は尊重してあげたいと感じました。国がそこを決めるのは行き過ぎていると思うし、非常にセンシティブな問題だと。  でも直感的にすごくやりたいと思いました。早川(千絵)監督の描く情景や、言葉がとてもステキなんです。そのなかで“プラン75”という今までありそうでなかった制度に焦点を当てて、何か非常に大事なところに触れている作品だと感じました。

ヒロムのメッセージは大きい

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(C) 2022『PLAN 75』製作委員会/Urban Factory / Fusee

――磯村さんは、市役所の“プラン75”申請窓口で働くヒロムを演じています。 磯村:ヒロムは、あくまでも仕事として“プラン75”を進めている人です。内容云々より、国が決めた制度だからと、おじいちゃん、おばあちゃんに、淡々と、でも丁寧に教えている。彼が何を考えているのかの説明は特にありません。だからこそ、バックボーンが非常に大事だと思いました。  そして自分の伯父さんが“プラン75”の申請に来たことで、それまで見えなかったヒロムの心の内が見えてくる。ずっと葛藤を押し殺しながらやってきたんだろうと思います。
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(C) 2022『PLAN 75』製作委員会/Urban Factory / Fusee

――彼が最後にする選択には、希望を感じます。 磯村:そこまで機械的な人間だったヒロムが、伯父さんとの出会いによって人間的に変化していきます。心の奥に置いていた思いが、「やっぱり間違っていないんだ」と。彼の行動、やろうとしていることのメッセージは非常に大きいと思います。
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自分の言葉が誰かを傷つける危険性
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ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画周辺のインタビュー取材を軸に、テレビドラマや芝居など、エンタメ系の記事を雑誌やWEBに執筆している。親類縁者で唯一の映画好きとして育った突然変異。X(旧Twitter):@mochi_fumi

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公開情報
PLAN 75』は新宿ピカデリーほか全国公開中
(C) 2022『PLAN 75』製作委員会/Urban Factory / Fusee
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