更新日:2022年10月06日 10:12
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藤井聡太、羽生善治との夢のカードで魅せた“終盤の速さと精度”

将棋は迫力たっぷりの攻め合い

羽生善治九段

羽生善治九段

 持ち時間10分、考慮時間1分×5回と、超早指しで行われる本棋戦。戦型は横歩取りに。飛車、角、桂、歩といった駒が躍動する戦型で、厚みを築いてじっくり構えるのではなく、さながら空中戦といった戦いが展開される。お互いに飛車を取り合った後、後手番の羽生が角の当たりを放置したまま敵陣に飛車を打ちおろす、攻め合いの展開に。結果は藤井が切れ味鋭く寄せ切り、67手という短手数で勝利。勝った藤井は稲葉陽八段と準決勝で争う。  現在五冠でタイトル戦無敗の藤井竜王の強さといえば、8歳のときからプロ棋士と同じ土俵で出場し続けた詰将棋解答選手権5連覇に代表される、終盤の読みの速さと精度だ。公開対局で行われた本局は、対局後に大盤の前で感想戦も行われる。感想戦では「本譜とは別の手を選択したらどうなったか?」を対局者が検討し合うのが常だが、そこで藤井竜王の読みの速さが伺えるシーンがあったので、局面図を用いて紹介しよう。

▲藤井—△羽生 51手目▲7三角成の局面

▲藤井—△羽生 51手目▲7三角成の局面

 藤井が7三の桂馬を取って踏み込む。解説の屋敷九段が「あっという間に寄せ合いになりましたね、強気と強気のぶつかり合いで非常に面白い攻防です」と語った局面だ。ここから△6九龍▲4八玉△6八とと進んだが、感想戦で羽生は△6八銀▲同玉△7一銀打と、一度受けに回る順を示した。それに対して藤井は読みの範疇だったのか、△7一銀打以下、▲6三馬△4五角▲5二玉△6五桂▲5一玉△2三角成▲3二角……と、一直線の読み筋をスラスラっと披露した。  藤井聡太のミステリアスな強さの一つに“符号読み”がある。100手、200手を瞬時に読むといわれる棋士は、その読みの過程で、脳内にイメージした将棋盤で実際に駒を動かしているというが、藤井はあるインタビューで脳内将棋盤を使わず、7二玉、8一銀打、同金…などと“将棋の符号”だけで読むと答え、プロ棋士たちを驚かせたというものだ。
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藤井の“符号読み”。羽生の答えは?
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