ニュース

ウクライナがチェチェン独立を事実上の承認。ロシア大崩壊の予兆か

かつてはウクライナ人がチェチェンのために戦っていた

ロシア語で北コーカサス市民に抵抗を訴えるゼレンスキー大統領

ロシア語で北コーカサス市民に抵抗を訴えるゼレンスキー大統領。背後の壁にあるレリーフは、19世紀にチェチェンとダゲスタンでロシア帝国の侵略に対して戦った英雄イマーム・シャミーリ。(ウクライナのインターネットテレビFREEДОМより)

 そして今、“ロシア帝国”に屈服したカドゥイーロフ派がチェチェン共和国で独裁権力を握り、恐怖政治を続けている。その“親分”のプーチン大統領と“子分”のカドゥイーロフ首長が連携してウクライナを攻撃。それに対して、ウクライナとチェチェン軍(チェチェン独立派軍事勢力)がウクライナ戦争で対決する構図になっている。  かつてロシア軍がチェチェンに侵攻して住民を大虐殺していたころ、多くのウクライナ人はチェチェンを助けるために義勇兵としてロシア軍と戦っていた。1995年初頭に撮影されたと考えられるYouTube動画では、チェチェン兵とともに戦うウクライナ義勇兵は、こう明言していた。 「チェチェンのために戦うのは、ウクライナを守ることである」  そして27年後の今、「ウクライナのために戦うのは、チェチェンを守ることである」と明言して、チェチェン人義勇兵たちがウクライナのために戦っているのだ。  このように、チェチェンを通した視点で見ると、ウクライナ戦争の違う側面が見えてくる。

チェチェン独立派亡命政府とウクライナが協定を結んだ

ロシア軍に破壊されたチェチェンの首都グローズヌイ中心部

ロシア軍に破壊されたチェチェンの首都グローズヌイ中心部。(1996年4月、筆者撮影)

 昨年夏、プーチン大統領は、「ロシア人、ウクライナ人、ベラルーシ人は三位一体のロシア民族だから一体となるなるべきだ」などと主張する論文を発表した。要は兄弟民族ということだが、この論でいけばいま兄弟殺しをしていることになる。 「兄弟民族」と言うのなら、ロシアによって大規模な虐殺を受けたにも関わらず、屈せずに抵抗しているウクライナ人とチェチェン人のほうが、むしろ「兄弟」といえるのではないか。しかも、両民族のロシアへの抵抗は今に始まったことでなく、過去数百年にわたって断続的に続いている。  特に今年7月末、チェチェン・イチケリア共和国(独立派亡命政府)のアフメド・ザカーエフ首相とウクライナ軍との間で協定文書が調印されたことが重要だ。その内容は、ウクライナのために戦っているチェチェン人部隊を外国人部隊としてウクライナ軍に組み入れるというものだ。  なお「イチケリア」とは山岳・高地を意味する。国際選挙監視団のもと選挙で選ばれた独立派政府は、国名を「チェチェン・イチケリ共和国」と定めている。
次のページ
現在のチェチェン共和国は、ロシアにより一時的な占領状態にある
1
2
3
ノンフィクション・ライター。週刊誌記者を経てフリーに。ロシア・チェチェン戦争を16回現地取材し『ロシア・チェチェン戦争の628日~ウクライナ侵攻の原点に迫る』(清談社パブリコ・第3回小学館ノンフィクション賞優秀賞作品の増補改訂版)を上梓。ほかに『増補版プーチン政権の闇』(高文研)、『不当逮捕~築地警察交通取締まりの罠』(同時代社)など

記事一覧へ
おすすめ記事