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山梨発「シャトレーゼ」は世界の“大衆菓子ブランド”になれるか?タイ担当者の意外な悩み

海外でも庶民価格を追求

「どこまでもお客様目線であれ」というシャトレーゼ流は海外でも一貫し、「おいしくて安い」を愚直に追求している。  同社の場合、日本からの輸入品をタイでそのまま販売すると、価格は日本の約1.5倍になる。だが効率化の徹底やコスト見直しをはかり、ギリギリまで価格を下げている。 「たとえばアップルパイは、通常であれば “あとは焼き上げるだけ”の状態で店舗に納品するんですが、タイだとどうしても割高になってしまいます。そこでリンゴやカスタード、パイ生地をパーツごとに輸入して、店舗で組み立て加工することで、コスト削減に成功しました。今は日本とほぼ同価格でご提供できています」
シャトレーゼ

プレミアムアップルパイ 110バーツ(約420円)

 店で焼き上げバターが香るアップルパイは、タイ人から「サクサクのパイ生地がおいしい」と大きな評判を呼んでいる。

タイ人を魅了する生クリーム

 シャトレーゼが届ける「日本の味」は、海外でも広く愛されている。タイで特に評判なのは生クリームだ。 「高温多湿なタイでは牛や鶏が水をたくさん飲むため、採れる卵や牛乳も水っぽくて薄味です。でも弊社の生クリームは、名水白州の水や北海道の濃厚ミルクなど、こだわり抜いた上質な素材を使っています」
シャトレーゼ

森の中にある白州工場(シャトレーゼ提供)

 筆者のタイ人の友人にもシャトレーゼファンは多い。友人(20代・タイ人女性)は次のように語る。 「シャトレーゼのケーキは、とにかく生クリームがおいしいの。甘さ控えめで、口当たりが軽くて食べやすい。甘々なタイのケーキと全然違ってビックリした(笑)」  コロナ禍において、シャトレーゼは国内のみならず海外でも売り上げを伸ばした。親日のタイでは「リアルジャパンの商品が食べたい」という需要が加速し、日本から商品を直輸入する同社の人気を後押しした。 「タイは弊社ブランドを口コミで広めてくださるお客様も多いです。コロナ禍では持ち帰りが浸透したようで、まとめ買いにより客単価がアップしました。その流れは今も続いていますね。前年比だと115%ほどの伸長率で、コロナ禍前の売り上げを上回っています
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タイで直面した「ブランド名問題」
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バンコク在住ライター。岡山出身。キャリアやビジネスに関する取材・インタビュー記事をメインに執筆中。オンラインで日本の著名人取材も行う。世界41か国に訪問歴がある旅好きです。 Twitter:@pippirotta39

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