ニュース

日本は「コオロギ」に頼るほど食糧危機なのか。東大教授「子供を実験台にしてはいけない」

政府の危機認識力は低い

コオロギ

写真はイメージです

 もう一つ大きな要因として、「目先の歳出削減しか考えない財政政策です」と答える。 「年々税金は上がり続ける一方、使う方は渋りに渋り、農業予算などはとにかく減らすことしか考えていません。国家国民のためにどこにお金をかけるべきかという大局的戦略が全くない。だから農業はどんどん苦しくなり、輸入依存が高まり、自給率は低下し、いざという時に国民の命が守れない世界で最も極端な国になりました。  にもかかわらず、2023年1月に岸田首相は施政方針演説にて、食料安全保障や食料自給率への言及はなく、『農林水産品の輸出額は、1兆円を突破しました。次の目標である、2025年、2兆円突破に向け、輸出品目別にオールジャパンで輸出促進を行う体制を整備します』『スマート農業、ドローンによる配送、遠隔見守りサービスなどを組み合わせたプロジェクトを日本の中山間地域150か所で実現します』など、地に足のついていない話ばかり。国民の食料確保や国内農業生産の継続に不安が高まっている中、危機認識力が欠如していると言わざるを得ません」

牛を殺したら15万円

 長年にわたる政府の舵取りが現在の食糧危機を招いたことがわかった。ただ、その原因を作った政府は食糧危機に本格的に取り組む姿勢は見せていない。 「国内生産の命綱ともいえる米ですが、実は米価はどんどん下がっています。長期間のデフレにコロナ禍も加わってさらなる消費減が起き、一俵あたり9000円まで値下がりしました。ここ最近はわずかに上昇しましたが、生産コストは一俵あたり平均1.5万円かかるため、これでは作り続けられるわけがない。しかし、政府は『米が余っているから作るな』と“減反”を強いてきました。さらには、牛乳が余っている状況も以前から報じられていましたが、これにも政府は『余っているから搾るな』と言うのみ。  とはいえ、米や牛乳などが余っている原因は、賃金や所得が減り続けて、“米を買いたくても買えない人の増加”です。本来であれば、政府が農家から米などを買い上げ、フードバンクや子供食堂などに届ける人道支援を講じなければいけません。にもかかわらず、『生産するな』『牛乳搾るな』と突き放し、さらには『牛一頭を殺せば15万円の助成金を出す』という政策まで実施しました」
次のページ
アメリカの顔色を伺う政府関係者
1
2
3
フリーライター。主に政治経済、社会問題に関する記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。Twitter:@mochizukiyuuki

記事一覧へ
おすすめ記事