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WBC優勝で歓喜に沸く日本列島。いつか“第二の大谷翔平”を見てみたい

単にあこがれの対象としてではなく…

 ダルビッシュが合宿当初から選手たちに注入したのは表に出てくる話ではスライダーの話であったり、メジャーリーガーのスーパースターが日々のルーティンをどうこなしているかだった。  メディアの影響により「スライダー」ばかり話題が上がったが、ダルビッシュはそうした一つひとつの違いを話すことや行動を見せることによって、メッセージとして伝えていったのだった。  なぜ大谷はすごいのか。ただ能力が高いからではなくその取り組み方にある。「天才」、「才能」という言葉で片づけてしまいそうなところを具体化していくことで、若い選手たちに知識を注入して行った。  メジャーリーガーはあこがれの別世界のものというのではなく、それだけの取り組みをした者の集まりである。そう彼らに伝えることで、大谷がチームに合流したときに、国内組は大谷らを単にあこがれの対象としてではなく、一挙手一投足を見守ることができたのである。

物語は選手全員によるダイアローグへ

 その環境ができあがってからは、大谷の独壇場である。    それは戦力として、大谷だけが頭抜けた存在という意味ではない。試合の中で特大の存在感を放つ大谷が、先頭に立つことの意味が出てきたというわけだ。  大谷が勝利の執念を出せば、それに呼応するかのように若い選手がつられていく。集団としての戦うチームが、日に日にできあがっていったのだった。
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主役・大谷の気迫に周囲が呼応
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新聞社勤務を経て、2003年にフリージャーナリストとして活動開始。『Number』(文藝春秋)、『slugger』(日本スポーツ企画)などの紙媒体のほか、WEBでも連載を持ち、甲子園大会は21年連続、日本シリーズは6年連続、WBCは3大会連続で取材している。2018年8月に上梓した「甲子園という病」(新潮新書)が話題に。2019年には「メジャーをかなえた雄星ノート」(文藝春秋)の構成を担当。 Twitter:@daikon_no_ken

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