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WBC優勝で歓喜に沸く日本列島。いつか“第二の大谷翔平”を見てみたい

主役・大谷の気迫に周囲が呼応

 大谷の勝利への情熱が分かりやすく出てきたのは、準々決勝のイタリア戦だ。先発マウンドに上がった大谷は1球ごとに声を張り上げ、気持ちを全面に押し出したのだった。  侍ジャパン・栗山監督はその様子をこう振り返っている。 「ずっと彼を見てきて、翔平らしさが出るときはああいうときで、投げるとか、打つとは別として、この試合を絶対に勝ちに行くんだと、野球小僧になりきったときに彼の素晴らしさが出てくる。ただ、ダルもそうなんですけど、アメリカから来た選手は状態ができあがっていない中で投げなければいけない。その中でなんとかしようという思いは、選手たちも感じていたと思います」  大谷の気迫にそれ以外の選手たちも気合が入っていく。何としてでも世界一になるんだという思いは選手全員が共有していた。

苦しい展開が続いたメキシコ戦でも…

 それが最高の形で現れたのが、準決勝のメキシコ戦だった。この試合では、今大会で初めて終始リードを許す苦しい展開だった。先発の佐々木朗希は160キロのストレートを連発。3回を無失点に抑えたが、初めてのピンチを迎えた4回表、二死一、二塁からルイス・ウリアスに左翼スタンドへ放り込まれて3点を失ったのだった。  ほぼ初めてといっていい追いかける展開となり、敗北の予感が漂った。その中で、気持ちを見せたのが大谷だった。安打を打つたびにベンチを鼓舞するように、声を荒げた。  そして、7回に吉田正尚が同点本塁打を右翼ポール側に叩き込み、試合は振り出しに戻ったのだった。
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大谷の気迫が周囲に伝播
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新聞社勤務を経て、2003年にフリージャーナリストとして活動開始。『Number』(文藝春秋)、『slugger』(日本スポーツ企画)などの紙媒体のほか、WEBでも連載を持ち、甲子園大会は21年連続、日本シリーズは6年連続、WBCは3大会連続で取材している。2018年8月に上梓した「甲子園という病」(新潮新書)が話題に。2019年には「メジャーをかなえた雄星ノート」(文藝春秋)の構成を担当。 Twitter:@daikon_no_ken

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